うちのクラスに最低一週間に一回は学校を休む奴がいた。
俺の一つ前の席であるそいつは柔らかな笑みを時折見せ、不良などというものとはまた違った雰囲気を持っている。
綺麗に黒一色の風に靡く短い髪を何気なく眺めるのが、知らず俺の日課になっていた。
「あれ」
昼休みも半ば過ぎた頃、天気の良い校舎の屋上で昼食を取っていた俺を見て目を丸くする姿があった。
屋上のドアノブを捻って顔を覗かせたそいつはそのまま俺へと歩み寄ってくる。
「いつもここで食べてんの?」
コンビニの袋を提げて人懐こい笑みを浮かべるこいつは前の席の男、<名字><名前>である。
「あぁ」
答える俺と向かい合うようにして<名字>はしゃがむ。
「僕もここで食べていい?」
「構わないが・・」
今までさしたる話もしたことがない<名字>を知るきっかけとなったのは、ここだったのかもしれない。
太陽の光に反射してなお色褪せない髪が視界に入る。
その前髪の下にある同色の眸がまるでそれ自体生き物のようで、そっと俺は視線を逸らした。
「今日の数学でさぁ――」
<名字>の声が風の音を背景に屋上に響く。
さっきまで賑やかだった校舎が嘘のように静かだった。
俺から逸れない眸、黒く黒く黒く―――。
映る空さえも仄暗く染めていた。



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