それからというもの俺は自分で自分が可哀想になってきた。
目が合うと逸らされる、姿を見つけたら逃げられる。
そして俺がその話を切り出さないようにか決して一人にならない。
「・・よおマルコー」
俺の隣で甲板にしゃがみ込んでいるエースが間延びした声で呼ぶ。
その視線は俺と同じ所――ついさっき<first>が俺の姿を見つけて走り去った船内への扉を見つめていた。
「何だよい」
続く言葉に予想がついて面倒に思いながらも、聞き返すとエースはやはり予想通りのことを口にした。
「お前<first>と何かあったのか?」
エースに視線を向けることなく揺れる海面へとそれを移す。
「さぁな」
何かあったかなどもちろんあったに決まってる。
友人だと思われていただろう相手にキスをして気持ちを悟られて、告白する前に逃げられたのだ。
言ったら笑われるのは目に見えているため決して口にはしないが。
「俺の勝手な想像だけどさ、・・あー・・えーと・・、手ぇ出した?」
エースのくせに鋭いじゃねぇかと隣の若い男を一瞥する。
黙ったままでいるとエースは遠慮なしに口を開いた。
「前々からまぁお前は<first>を友達って風には思ってねぇんだろうなとは思ってたけどよ、<first>はまだ早いだろ?」
その言葉が真実がどうかは知らないが、第三者のエースならともかく俺に<first>の心情を量るほどの余裕はない。
まだ、と言うならもう少し待てば良かったのだろうか。だとしたらどれくらい?
ここ数日や数週間で惚れた訳じゃない。
何もしなければいくら待ったって仲間は仲間のままだ。
「・・うるせぇよ」
ため息を吐いて耳の痛い話から逃れるべく足先を船内に向ける。
そんな俺にエースは声をかけることもしなければ視線を寄越すこともなかった。



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