きっかけは興味本位だったのだろうと最近になってよくそう思う。
出会った時の僕らはまだ子供で将来なんてものは考えてもいなかった。
僕に話しかけて来たのはルフィ一人で、そんな相手に惹かれるのは当然だったに違いない。
じゃあルフィは?
十代になったばかりだったルフィが何かを計算して僕に話しかけて来たとは思えない。
だからきっと。
「おい」
思考を遮った声に目を上げるとルフィが僕の顔を覗き込んでいた。
「どうしたんだ?」
不思議そうな表情を隠すこともしないでルフィは首を傾げる。
昔とまるで変わらないその仕草にため息が出そうになった。
実際何も考えていないんじゃないかなんて、そんなことさえ思ってしまいそうだ。
「ちょっと考え事」
少し笑ってその目を見つめ返すと、ルフィは興味なさそうに相槌を打って隣に寝転がった。
「眠い?」
僕らが会うのは決まって夜だ。
稀に何処かの島や街中で会うこともあるが、ルフィが一人でいて誰にも見付からない状況といえば、やはり真夜中のこの船の見張り台の中だった。
「ん〜ちょっとな」
全然眠くないなんて、気の利いた嘘も吐かない。
「寝てもいいよ?」
僕の言葉にルフィは視線をこっちに向けて眉根を寄せた。
その反応に僕が目を丸くすると、不機嫌な顔のままルフィは起き上がる。
「つまんない嘘吐くな」
丸くなったまま戻らない僕の目をルフィは咎めるように見つめてきて、逸らすことが出来ない。
嘘じゃないよと告げようとしても唇は動かなかった。
どうしようと混乱する僕にルフィは呆れたように息を吐き出す。
「泣くなよ」
「泣いてないよ!」
咄嗟に口が動いたのは本心だったからだろう。
僕の反応にルフィは可笑しそうに笑った。
自分が嘘を吐かないからだろうか、ルフィにはどんな些細な誤魔化しも通用したことがない。
しかし素直になれたとして一体それが何になるのか。
「ルフィ」
名を呼ぶとルフィは首を傾げる。
「一緒に寝ようか」
「おう!」
笑うルフィはまたごろりと寝転がって僕もその隣に横になる。
「星がすげーな」
「そうだね」
答える僕の視線の先はそれでもルフィに向いていた。
今こうして皆の目を忍んで僕に会って、僕の話に付き合って。
興味本位から始めたそれを今でも続けているのは何故?
聞けない問いが僕の中で渦を巻いて、導き出された答えがまた僕の口を閉ざす。
もしかしたらそれは僕を繋ぎとめてしまった罪悪感のせいなんじゃないか、なんて。
「なぁ」
早くもうとうとし出したルフィが目を閉じながら告げる。
「寝てる間に帰るなよ」
暴かれた途端、このひび割れた関係は崩れ去ってしまうのだろう。
「・・何処にも行かないよ」
だから僕は何度でも嘘を吐くのだ。


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