久々に寄港した街で船を降りる直前、ふと私はナミさんに呼び止められた。 「悪いんだけどあんた達二人で買い出しに言ってきてくれない?」 すまなそうに眉を寄せて言うナミさんに二人?と聞き返さなかったのは、呼び止められた存在がもう一つあったからである。 「え・・<first>さんと、ですか?」 そしてもう一度ごめんねと謝るナミさんにメモまで手渡されてしまえば、そこに書かれた大量の品物に私一人で行ってきますよと言うのは余りにも不自然だった。 私はメモを片手に<first>さんと二人、港に取り残される羽目になる。 「えー・・では、行きましょうか」 私の問い掛けに<first>さんはいつもの笑顔でうんと頷いてみせた。 実はあの後、昼飯だとサンジさんに呼ばれ返事や何やらはうやむやになってしまったのだった。 タイミングを全く逃してしまった私達は気まずいままに任された仕事を淡々とこなしていく。 「お待たせー」 別の店の荷物を持って外で待っていた私に<first>さんが更に大きな荷物を持ってそう声を掛ける。 「いえいえ。おや、そちらの方が重そうですね。交換致しましょうか」 「え?いいよ大丈夫だよ」 私より明らかに小さくそして男の割に華奢である彼にそんな重たい荷物を持たせるのは忍びなくて、遠慮する彼に私はほいほいと荷物を交換しようとする。 「っ・・」 すると彼の荷物を取ろうとそれに手を掛けた瞬間、彼の体が微かにびくりと反応した。 顔に薄く朱を昇らせる彼に内心動揺しつつもそっと荷物を持ち上げる。 こんな体温の無い骨の指にも、貴方は頬を染めてくれるのですか―――。 ぽんと軽い荷物を彼に渡して胸ポケットからメモを取り出す。 「あとは松明用の石油だけですね」 私が動揺したことに気付かなかったのか、それとも私が彼の動揺に気付いたことすら気付かなかったのか。 彼は努めていつも通りに、また笑って頷いた。 彼の笑顔が一種の自己防衛ではないかと思ったのもこの時だ。 「いくらなんでもこの荷物の多さはヒドイよねー」 ははっと声を上げて笑う彼に同意しながらも私は複雑な思いを抱く。 もしかしたらその笑顔の下で彼は胸を痛めているのかもしれない、そして恐らくは、それは私の所為であるのだと――。 しかし私のこの口はその思いを介さずに、ただ他愛も無い言葉だけを吐き出し続けた。 |