くるくるとよく笑う彼に確かに私は惹かれていた筈なのに
甲板で一人しゃがみ込み物思いに耽る彼にどうしたのかと尋ねた時、返って来た言葉に私の胸は痛まなかった。
「どうしよう・・好きになっちゃったよ」
海の方を見つめて、照れたような困ったような顔をして彼は告げる。
そして私がその想われ人≠ノほんの少しの羨ましさを抱いただけだったのも、既に何処かで諦めを抱いていたからだろう。
こんな姿になった私を友達や仲間として好いてはくれても、愛してくれる人はいないだろうと。
「おやおや、どなたをですか?」
この狭い船の上でそれを悩んでいるくらいだからナミさんやロビンさん、もしくは船長さんだろうかと呑気にそんなことを考えていると、彼は私の言葉に頬を赤くしたまま少し目を丸くして両手で綺麗に顔を覆った。
まるで少女のような可愛らしさだ。
「・・・ブルック」
「はい、何でしょう?」
少し突っ込み過ぎたでしょうか。
思いながら依然として顔を見せようとしない彼に聞き返す。
「そうじゃなくて・・・ブルック」
欠片としてその可能性を考えていなかった私がそれに気付いたのは、今や彼の耳が熟した林檎のように真っ赤になっていたからかもしれない。
「え、あ、・・えっと、それは、つまり―――」
するりと手を解いて、歯切れの悪い私を彼が見上げる。
あぁ恋する眸だ。
まさかそれが私に向けられているなんて。
何処か縋るように頬を染めて私を見つめる彼に、無い筈の心臓がドキリと高鳴る音が聞こえた気がした。

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テーマ「人外ファンタジー」
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