当たって砕けることならもうとっくにやった。 何度も当たって何度も砕けて、もう止めてしまおうと思った時に可能性が見えたのだから、また当たってみるしかないだろ? 「何飲んでるんだい?」 休憩室でベンチに腰掛ける<first>に声を掛ける。 驚いたように目を丸くして俺を見た<first>は、それでもまたすぐに目を逸らした。 「あ、こ、コーラ・・」 「喉渇いてたんだ!一口くれるかな?」 最初から貰うつもりだったのだが、いきなり一口くれとは流石の俺でも言い辛かった。 だからと言って最初の一言がどういう役割を果たしたのかは不明だが、まぁ今の俺にとっては<first>の飲んでいるものを一口貰うことが重要なのだ。 「え?あ、いいよ?」 貰ったそれのストローに口をつける。 決して飲み干さぬようにして一口飲み、俺は笑顔のまま<first>にそれを返した。 「ありがとう、美味しかったよ!」 立ち去りながら不自然でなかっただろうかと頭の中で思い返す。 <first>から見えないところまで移動して、俺はこっそり残った<first>を覗き見た。 最初から俺の目的はここにある。 傍に行って震えるほどに嫌いな相手なら、そいつが飲んだ後の飲み物なんか飲まないだろう。 俺だったら飲まない。 ベンチに座って返されたコップを手にした<first>は、何とも言えない表情でそれを見つめていた。 机の上に置いてみたり、また手に持って口に運ぼうとして止めてみたり、見ていて飽きないが俺が見たいのはそれじゃない。 飲むなら飲めとこっちが焦れて来たところで、思わぬ奴が現れた。 「お、ちょうど良かった。一口くれねぇか?」 いつの間に現れて<first>の前で止まったそいつ、イギリスは今一番言ってはいけない一言を<first>に告げた。 ここで君が飲んだら台無しだろ! 飛び出してそう言いたいところだが、もちろんそんなことが出来る筈もない。 ひょいと<first>の手からコップを取ったイギリスが俺の計画を台無しにしようとした瞬間。 「だめッ!!」 突然大きな声を出して、<first>はイギリスからコップを奪い返した。 呆気に取られるイギリスと、そして自分自身驚いたように狼狽する<first>。 もちろん俺だって驚いていた。 「あ、ご、ごめんなさい・・その、でも、これは飲んじゃだめです・・・」 <first>は顔を赤くして気まずそうに俯く。 言われたイギリスは訳がわからないと言ったように首を傾げていた。 「お、おう。悪かった」 「いえ、あの・・ごめんなさい」 謝罪に謝罪で返す<first>の手にはしっかりとコップが握られている。 これは計画が成功したと言ってもいいんじゃないだろうか。 この間見えた希望の光は、ただの自惚れじゃないと思っても。 どくりどくりと鼓動が跳ねて、内側から俺の胸を痛いほど叩いている。 依然として顔が赤いままの<first>に視線を遣る。 この片想いが叶うなら、もう何も望まないのに。 |