※レポート30『カワイイ冗談』後、捏造
−−−劇場艇プリマビスタ
「なーにしてんの?」
がばっと来た後ろからの衝撃にビクともせず、カインは首だけで振り向いた。
「名前…」
「反応が薄い」
名前がつまらなそうに呟くと、それとは逆にジェクトは面白そうに笑う。
「よくソイツのギザギザした背中に抱きつく気になったな」
「抱き心地は大変宜しくないけどね」
そうは言っても、カインの背中に飛び乗ったまま彼女はそのままで居る。
「なら離れたらどうだ?」
「良いじゃねぇか、カワイイ嬢ちゃんに抱きつかれるなんてよ」
他人事だと思ってと言わんばかりの視線が向けられるが、どこ吹く風。
「というか、名前は何をしに来た?」
「カインの背中に抱きつきに」
「………」
「…カワイイ冗談だって。なんかみんなでバーベキューするから2人を呼びに来ただけ」
「お、良いじゃねぇか!偶にはみんなで飯を食うのも」
彼女の言葉に乗り気なジェクトとは対にカインは眉を寄せる。
「「今はそんなことをしてる場合では…」」
「………」
ピッタリと重なったカインと名前の台詞。
「ヴァンがね、カインならそう言うだろうって」
悪戯に成功した時のそれと同じ表情で彼女は続けた。
「息抜きも必要じゃん」
「付き合ってやれよカイン。…それに、さっきも言っただろ“くっちゃべったり笑ったりそれだけで喜ぶ奴もいる”」
「………」
深く息を吐くその背中から離れて、名前は笑った。
「そうだよ、早く来なかったらあの仮面…ヴァンと2人で遊んじゃうからね!ん、やっぱり遊んじゃおうか。お先!」
「おい!本気じゃないだろうな?!」
「確かに面白そうだな。嬢ちゃん、俺も混ぜてくれ」
「良いですよー。みんなでカワイイ仮面にしちゃいましょうか」
けらけらと笑いながら名前とジェクトは駆け出した。
「…ったく、名前はともかくジェクトまで」
そんなことを言いながらも、口元は緩んでいて。
「奴らなら本気でやりかねんからな」
流石にあの仮面をカワイくされるのは…そもそも可愛くなるのだろうか。
一抹の疑問を過ぎらせながら、彼は2人の後を追った。
「お、良い匂いじゃねぇか!」
「えーみんな来るまで始めるなって言ったのに」
コスモス陣営に戻れば、既に料理が作られていて。
「やっと来たな名前…ってカインは?」
「いや、なんでナチュラルにカインの仮面被ってんのヴァン」
しかも当たり前だが似合ってない。
「おい待てよヴァン、俺がお前に似合うように加工してやるって!」
「俺ののばらを返せバッツ!」
「つーか俺にも貸せって!」
更にフリオニールのであろうのばらを手にしたバッツと、ヴァンの頭に手を伸ばすジタンも居て。
「バッツ、いくら何でものばらはダメだよ」
彼の手からのばらを奪って、フリオニールに手渡す。
「ありがとう名前」
「でも加工するのは賛成ー!可愛くしようよ」
「待てよ、可愛くじゃなくて面白く、だろ?」
ヴァンの頭から仮面を奪っては自分で被るジタンが、楽しげに言う。
「ジタン、駄目だお前も全然似合ってない。ここは俺が万人に似合う格好良い仮面にだな…」
「バッツだって似合ってなかったろ!」
そんなやり取りを見て、ジェクトは呟く。
「あれ、止めなくて良いのか?」
やっと来たらしいカインは溜め息の後に答えた。
「度が過ぎたら止める」
それまでは、と。
「好きにさせてやるさ」
それは、バッツが仮面を半壊させる寸前までだったけれど。
……………
Res:ささみ様
初めまして、この度は素敵なリクエストを有難うございました!
企画当初にリクエストして頂いたにも関わらず大変遅くなり申し訳ありません!カイン、ジェクト贔屓で調和組…でしたが後半の調和組のセレクトは完全に私の好みです←
あまりにも不定期更新な拙宅ではありますが、ふらりと立ち寄る感じでこれからもお楽しみ頂いければ幸いです。