『明日って暇?』


ディスプレイに表示された名前を見た瞬間にスルースキルを発動させかけたが、後が怖いので素直にその電話に出た。


「ごめん、今世紀最大ぐらいのレベルで忙しい」


『良かった暇みたいだね。明日行くから、そのつもりで宜しく』


「は?!ちょっと待った…、」


ツーツーツー…。ため息を吐いてから、ケータイを閉じて机に置く。


「まぁ、確かに暇だけど」


一日中寝ているという怠惰を、神様は許してくれないらしい。















「ねぇ、来る時間を知らせないって嫌がらせだと思うんだけど?」


「あぁ、11時ぐらいだよってメールしたつもりなんだけど何故か送信出来てなくて。それに関してはゴメン」


おかげで朝早く起きてしまったじゃないかと文句を言えば、お詫びってほどじゃないけど…と箱を渡された。


「あ、美味しそう」


「好きなんでしょ、チョコレートケーキ」


「有難う精市、紅茶で良い?」


「うん、ストレートで」


いそいそとお湯を沸かして、皿にケーキを移す。


「でさぁ、何しに来たの?」


お湯が沸くのを待ちながら尋ねれば、勝手知ったるとばかりにソファに座りテレビを付ける精市は言った。


「お家デート」


「彼女としなよ」


「だから名前と」


「だからの使い方可笑しい」


まぁ、彼との会話は基本的にこんな感じではあるけれど。


「はい、紅茶」


「お昼前なのにアフターヌーンティーみたいだね」


「そして何故移動してまで私の隣に座る?」


せっかく目の前に紅茶とケーキを置いたのに、わざわざ移動するなんて随分と前衛的な喧嘩の売り方である。


「こっちの方がテレビ見易いし」


「………何見るの?」


勝手知ったるとばかりにリモコンをいじる精市をそのままに、淹れたばかりの紅茶を飲む。熱い。


「なんか無いの?」


「某海賊映画か、某宇宙戦争映画ならあるよ。あと某ゾンビ虐殺映画」


「名前ってアクション好きだよね。俺、人が死ぬ系の映画って基本的に駄目なんだけど」


「別に人が死ぬのが良いんじゃなくてアクションが好きなの。あ、某猫が恩返しする映画もある」


「俺、それなら某カントリーロードの方が好きなんだけど?」


「それは今赤也に貸してる」


じゃあ猫で良いね、とDVDを入れる。


「今度来るならせめて何か借りてきてよ。私の趣味って偏ってるよ?」


「いや、俺も今日暇だから取り敢えずお前に会いに行こう…って思っただけだからさ。何しようとか決めてなかったんだよね」


何それ、とは思いつつもそれ以上は口にしない。映画は静かに見たいし、結構好きなのだ。あの紳士的な猫が。















こてん、と肩に重みがかかった。


「精市?」


映画は終盤で、巨大迷路で迷子になっているところだ。


「いや、眠いわけじゃないんだけど…」


すっかりリラックスモード全開である。


「なんか居心地良くて」


ふわふわの髪が頬にくすぐったい。が、そのままにしておく。


「休日ぐらいゆっくり休んでれば良いのに」


基本的にうちのテニス部は休みが少ない。特に今回は結構久しぶりの丸1日休みだから、雅治あたりはずっと寝てると宣言していたぐらいなのに。


「部活が無いと名前に会えないだろ」


「………」


珍しく拗ねたような声音に、思わず画面ではなく彼を見てしまった。

人の肩に頭を預けてるくせに、プイと此方を見ようとはしなくて。もしかしたら照れくさいのかもしれない。


「じゃあ、今度の休みは精市の家に行こうかな」


それが可笑しくてそう言えば、別に良いけど…の後に彼は笑った。


「両親には俺の彼女ですって紹介するから」


「うん、やっぱり行かない」


考え直してから口に含んだ紅茶は冷めていたけど、淹れ直すのに立ち上がろうとは思わなかった。


私の右肩に重さがあるうちは。










……………


Res:まち様

初めてまして!この度はリクエスト有難うございます。ネクロポリスで〜の設定で甘いの、ということでお家デートなんぞさせてみたのですが…あまり甘い感じになってなくて大変申し訳ないです(-ω-;)

大好きと言って頂け本当に嬉しい限りです!まだまだ未熟ではありますが、これからも拙宅を宜しくお願いします!











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