レゼント、とお返し



「誕生日プレゼントって、」


私の片想いの相手である宍戸君がもう少しで誕生日。
それなりに仲良いし、プレゼントをあげるのは変じゃないんだろうけど。(というかテニス部ファンの子は親しさに関わらずプレゼント渡してたりするし)


「何が喜ばれるかなぁ?」


「スター・ウ●ーズ、コンプリート・サーガブルーレイBOX」


「うん、私が欲しいよ」


9枚組で本編+未公開シーンや別テイクシーンなど、合計30時間以上収録のボーナス・ディスク3枚付だなんてファンなら欲しくて欲しくて仕方ない一品である…が。


「17,325円とか…」


いくら氷帝が金持ち学校とは言え、全員が跡部君的な金遣いが出来るワケではない。
むしろ私が欲しいのに、ブルーレイBOX。


「もうフツーにケーキとか作れば良いじゃん」


「確かに誕生日にはケーキだけど、クラスメートにあげるプレゼントとしてはフツーじゃないと思う」


せいぜいお菓子ぐらいではないだろうか。しかし私はそんなに料理上手ではないし、それ以前にファンの可愛い女の子達からレベルの高いお菓子を貰うだろう。


「うー…」


「宍戸君の好きな食べ物はミントガムだよ」


「作れない〜」


なんでミントガムなんだよ。確かに渡しやすいけど誕生日プレゼントにミントガムって。


「別に、気持ちで十分じゃない?」


「………でも、」





何かしてあげたいと思うから…、この気持ちは恋なのだ。















9月29日…。


「………」


(うわぁ)


溜め息をつくことさえ放棄したらしい宍戸君は自分の下駄箱に詰められた誕生日プレゼントの類を、用意していたらしい紙袋に無言で入れていく。


「おはよー。…凄いねプレゼント」


「はよ。…頼んでもいねーのにご苦労なこった」


これだけモテるというのも複雑だろう。女の子好きならともかく、宍戸君は喜ぶどころかテンションが下がりつつある。誕生日なのに。


「今年のプレゼントはスター・ウ●ーズのブルーレイBOXだけで十分だっつの」


「え、良いなぁ」


思わずそう呟くと彼は爆弾を投下してくれた。


「なんなら家に観に来るか?」


「うん行く行…へ?!!いやいやいや、流石にお宅にお邪魔は…!」


いつものクセで乗ってしまったではないか。ていうか貸すではなく観に来るかって、え。まじで?良いの?


「どーせこのプレゼントの菓子なんかは1人じゃ食いきれねーし、消費すんの手伝ってくれ」


「あー…」


確かに。これだけの量を1人で消費するのはかなり大変そうだが学校内で貰うのは躊躇われる。
それに何より、ボーナス・ディスク…観たい。


「………お邪魔でなければ、観に行きたいです」


「ま、どーせ観終わらないだろうけどな」


なにせ合計30時間以上だ。丸一日あったとしても足りない。
いやでも大好きな宍戸君と大好きなスター・ウ●ーズが見れるなんて幸せ以外なんだと言うのか。


「今日は部活…が早く終わるわけねーから明日で良いか?」


テニス部員の誕生日パーティーは盛大らしい。だって部長が跡部君だもん。


「宍戸君の都合の良い時で大丈夫だよ」


例え私がどれだけ多忙であっても、最優先するから問題無い。


「じゃ明日また声かけるな、あんまゆっくりしてっとプレゼント押し付けられっから…」


「あ、待って!」


テニス部のレギュラー陣は誕生日にふらふらしているとファンに嫌がらせと紙一重な愛を貰う。故に彼らは女の子を極端に避けるのだが…、


「これなら、貰ってくれるかなって。…誕生日、おめでと」


取り出したのは、ミントガム。しかもコンビニのテープで作ったシールリボン付き。
結局何をあげていいか分からなくて、朝に近くのコンビニで買ったのを加工しただけだ。


「あ、やっぱり迷わ…」


「サンキューな!」


ただでさえ大量のプレゼントだから、要らないと言われるかと思っていたのに。

良い笑顔でお礼を言われて、凄く凄く嬉しくなる。


女の子達の気配に慌てて逃げていくその後ろ姿に笑みを零しながら、私の胸は酷く幸福感に満ちていて。





まるで、君からプレゼントを貰ったみたいだね。










ハッピーバースデー、宍戸君。















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