譲れなかったり
「これ結構イケるやん」
「まじで?」
腰に手をあて甲羅一気飲み。
ペナルティなのにピンピンしてる彼の味覚はいつから壊れたのか…なんて思ってたら。
「うん、ウマイよ?」
「えー…」
不二まで乾汁一気飲み。
彼らは味覚音痴またはあまりの不味さに舌がショートしたのだろうか。
「結局逃げ切ったのは幸村と名前、手塚と千歳か」
全員捕まえる気だったらしい柳が残念そうだ。本当に彼は敵にしたくない。
「千歳は行方不明やけどな。まぁふらっと戻ってくるやろ」
千歳は終始誰も発見すらしていないが、四天面子はいつものことだと気にしていない。
捕まった連中は現在再起不能なので、今は比較的静かだ。
「白石に邪魔された」
「ま、しゃあないやろ。名前ちゃんにあないなモン飲ませたかないわ」
名前を捕まえるのを邪魔された跡部様は先程からご機嫌斜めだが、フツーの味覚なら屍と化す飲み物を飲ませる気だったのかと思うとちょっと彼を嫌いになる。
「あーあ、白石の良いとこ取りか。どうせなら跡部に捕まっちゃえば良かったのに」
「精市さん重いです」
人の肩に顎を置かないで欲しい。
「ワイも名前捕まえたかったわー」
「え、実は私って嫌われてるの?」
「俺は名前ちゃんのこと大好きやで」
「へぇ」
「…泣かへん」
ぐすっと鼻をすすった侑士は無視。こちらだって疲れているのだ。
「取り敢えず屍組が復活するまでは休憩だな」
「それ、休憩終わらないよ…?」
多分、手塚も疲れてるんだ。
「いーやーや!ワイはハ●ルがええ!」
「何言うてんのや遠山、今日は魔女宅やろ!」
「もうト●ロでよか」
「千歳はどんだけトト●好きやねん!」
「………」
ぎゃいぎゃいと何を観るかで争う様子が何か可愛い。ほのぼのとした気持ちでそれを眺めていたら、蔵が注目と手を叩いた。
「今日はラピ●タ言うたやろ。でないと名前が立海に帰ってまうで?」
DVDは天空の城になりました。
「んー、」
「なんや金ちゃん、眠いならベッドで寝なさい」
目をこする金太郎はもう眠いらしく、先程からウトウトしている。
「やぁーや、まだ此処居たい…」
「金ちゃん…ズルいばい」
「ホンマ美味しい位置やなぁ」
千歳と謙也が言う通り、彼は名前の腕の中に居る。
「名前も眠いんか?」
そんな彼女は金太郎を後ろから抱き締めながらも、白石に寄りかかっている。
「んー、金ちゃんあったかい。一緒に寝よっか?」
「ええでー」
互いの体温が心地良いらしく2人ともユル〜とした感じだ。
「いやアカンやろ」
「名前先輩、何なら俺と寝ません?」
「絶対にあかんたい」
「せやなぁ、名前は俺と…って」
「………」
すぅ、すぅと規則正しい2つの寝息。
「金ちゃんはいつものことやけど、名前も寝付き良いんやな」
「疲れてるからやないですか」
「むぞらしかー」
無防備な寝顔に頬が緩む。
確かに2人共可愛い…けれど。
「なんや名前の寝顔さらすん妬けるから部屋連れて行くわ。謙也、金ちゃん頼む」
「しゃあないな」
そうは言いながらも千歳は金太郎を名前から離す。
「ん、」
「ほら、部屋行くで」
唸りながらも名前は白石の腕の中に収まり軽々と持ち上げられる。
「白石、変な気起こしたらアカ…ぶっ!」
真顔で言った謙也の脇腹に、彼の右足が入った。
「先輩、ダサいっすわ」
千歳は無言で頷いた。