には守られたり




「あと8分だね」


「疲れたー」


非常階段口にて周助と遭遇した。

額の汗を拭っているとパタパタと足音が聞こえてくる。


「げ」


「名前〜!白石〜!どこや〜っ!」


「遠山、んな叫んだら逃げられるやろ」


金ちゃんと光だ。
他にも足音が聞こえるから、周りは鬼だらけだろうか。


「名前、大丈夫?」


「ここまで来たら逃げ切るよ。じゃ、幸運を祈る」


彼は階段を、私は廊下を駆けた。


「あ!不二みーっけ!」


「捕まえろ!」


パタパタパタパタ。
鬼が過ぎ去ったのを見て、壁から壁へ。


(周助スマン。さて、どこに隠れようかなー)


なんて思いながらコソコソと移動。追加ルールで更衣室やトイレなんかは禁止されたので其処も駄目。


「つーかまえた」


「!」


くい、と後ろから引く手は精市のもので。


「隙あり」


「鬼じゃないじゃん」


楽しげな表情を浮かべる余裕があるのがズルい。
それを表情から察したのか事も無げに彼は笑った。


「だってイップスで視覚奪えるからさ」


「反則じゃない?」


ルールにイップス禁止を加えて貰えば良かった。


「他は結構捕まったみたいだし、あと5分か」


「さっき周助が包囲されてたよ」


多分捕まっただろうなぁなんて思っていたら。


「…それは俺らも同じやで」


「蔵!」


「手塚もだね。生存者は俺達だけかな?」


「いや、千歳は多分捕まらんやろ」


理由は分からないが、なんとなく納得してしまう。のはさて置き。


「私達も同じって?」


「乾と柳の案だろうな。完全な包囲網だ」


「それでも逃げて来たんやけど、5分もつかはビミョーやなぁ」


「えー、5分?」


結構ハードだ。
いくら相手が重りつきで体力が減っていても人数的に。


「精市、今こそイップスを…」


「人数的に無理だよ。ていうか、俺のこと何だと思ってんの?」


「神の子」


「まぁね」


否定しないのは想定内。
こんなほのぼのしてる間にも物音が危機的状況だと告げる。


「あー!見つけたでぇ白石!」


「勢揃いやないですか」


「俺から逃げられると思うとんのか?」


「げ、謙也鬼やったんか…」


「仕方ないな」


「負けるのは嫌いだしね。名前、幸運を祈る」


「待ってその台詞は私が死亡フラグ!」



そんな事を言いながら、その場から散らばった。










「逃がさへんで?」


「侑士なんか大っ嫌い!」


「おい忍足!凹んでんなうざってぇ!」


「景吾も嫌い!」


「………」


「ちょっと2人共何凹んでるんですか!」


「若は転べ!盛大に!」


「子供ですか!」


氷帝の鬼役達に追われている私は全力疾走中。四天は白石を、青学は手塚を、立海は幸村を…で氷帝は私を…ってふざけてる。


「もうやだ疲れた」


「ならさっさと俺様の胸に帰って来い」


「若!私は君の下克上を応援してる!」


「え…っ」


「なんでそこで照れるんや!」


ひょい、と階段の手摺りに横座りに飛び乗ってそのままシャーッと滑り降りる。


「おぉ!映画みたいやな!」


「やりますね」


「感心してる場合じゃねーだろ!」


すたっと着地したのは我ながら完璧な動作だったと思う。


(あと…、)


時計を見れば時間は後2分…も無い。


(ペナルティは嫌なんだよなぁ)


なんて思ったら。


「あ、名前や!」


「2人共捕まえたるでぇ!」


「名前、スマン☆」


「蔵のアホ!」


何がスマン☆だ。蔵の後ろから金ちゃんと謙也がついて来ていて。


「侑士!挟み撃ちや!」


「ま、しゃあないな」


W忍足は従兄弟故かどうかは知らないが、通じるものでもあるらしい。


「よっしゃ、タッ…」


「あ、触られなきゃ良いのか」


伸ばされた掌を避け、腕を掴ん…でからの捻り。


「あっだだだだだだ!」


「ゴメンね」


床についた謙也から逃げつつ言う。


「名前ちゃんそれは反則やろ!」


「勝ったモン勝ちや!」


「いつから四天生に!」


「いやいや名前は元四天生やからな。………金ちゃん、俺に触れたら毒手やでぇ?」


「げぇ?!毒手は嫌や!」


蔵にタッチしかけた金ちゃんの手が引っ込む。うん、彼も悪人だ。


「残り10秒!」


よっしゃ逃げきる、なんてその場から駆けたら。


「甘いな」


前方に、跡部様。
スタートダッシュして直ぐに止まれるはずもなく、自ら彼の伸ばした腕に捕まりに行く形に…、


「!」


ぐい、と体が後ろに引かれたと思ったらぎゅ、と抱きとめられて。



「悪いなぁ跡部クン、名前守るんは俺の仕事やねん」



景吾の伸ばした手は私に触れることはなく、私を守るように抱き締める蔵の腕で止まって。



ピーッ!と遠くでブザーが鳴った。








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