害手段は笑顔です。



好きな人が居る。同じクラスの名字名前。
惚れたきっかけはハッキリしないが、いつの間にか目が彼女を追っていて。他の男と話しているのを見ると苛立って。


「それ、惚れたんじゃねぇの?」


ブンちゃんに言われて、初めて自覚した。あぁこれが恋なんだと。
自覚したらそれはそれで恥ずかしくて。目で追ってるくせに視線が合えばそらしてしまう。上手く話せない。


だから、今なんかはスッゴく困ってる。


「痛かったらゴメン」


本日の体育はサッカー。ブンちゃんとは違うチームでかなり本気を出して試合した。…ら、何やかんやで足をかけられ(ワザとじゃなか。競技上仕方ないナリ)膝を擦りむいた。
久しぶりに自分の血を見たなんて思っていたら教師に保健室で治療して来いと言われて。大した怪我ではないがダラダラと流れる血をそのままにしておくわけにもいかないので保健室へ。

次の現文が面倒だし(体育の後の現文なんて睡眠時間ぜよ)ついでにサボろうかなんて思っていたら。


「仁王君?」


「名字?!」


手にテーピングを巻く片想いの相手。


「先生いないみたい…って、膝!大丈夫?」


俺の足を見るなり、慌てて座るように指示される。


「男子サッカーだっけ?今治療するから」


そう言って救急箱から慣れた手つきで俺の足を消毒しようとする。そういえば彼女は保健委員だ。


「痛かったらゴメン」


例え消毒が痛かったとしてもそれは彼女のせいではない。…なんて言ってあげる余裕もなく。

ピンセットで摘んだ消毒液を含む脱脂綿が傷口に触れて多少の痛みはあるが、我慢出来る範囲だ。
消毒が終わった後に綺麗な指がガーゼ越しに触れて。

美人と名高い保険医に怪我を治療されたって、何とも思わないくせに。


「…っ、」


こんなに緊張するのは、いつ以来だろうか。


「よし、大丈夫」


絆創膏では足りないから、貼れるタイプのガーゼを丁寧に傷口にあてて彼女は言った。
触れていた手が離れていくのを、酷く残念がる自分がいて。


「あ、りがと…ナリ」


お礼を言うだけでも、心臓が五月蝿くて。


「どう致しまして」


「!」


だから、ふわりと。
その笑顔が俺だけに向けられるだけで。


「さ、先に教室に戻ってるぜよ!」



心臓が破裂しそうになる。










「おー仁王ー。………どうしたんだお前」


「ブンちゃん、俺はいつか名前ちゃんに殺されるナリ」


「はぁ?」


「可愛かった…っ!」


「いや何があったか説明しろぃ」










人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -