童心に戻ったり
「名前はっけーん!」
「うげ」
英二がひょこっと現れて、私はその場で華麗にターンからの全力ダッシュ。
「逃がさないにゃ!」
「もー、他の部員狙いなよ!」
まったく、ただの鬼ごっこなら素直に楽しめたというのに。
「これからお前達に鬼ごっこを始めてもらう」
いつも通りならここいらで試合が始まるといった時間に、ちょっとバトルロワイ●ルみたいな感じで手塚は言う。
「てめーら、籤は引いたか?」
「景吾、なんで私まで引かされてるの?」
「あーん?そんなの全員強制参加だからに決まってるだろ」
ちょっと待てよ。いやお待ち下さいマジで。
手塚の言う“鬼ごっこ”とは、鬼さんから逃げる子供の頃に誰もが遊ぶアレ…の改悪番だった。
曰わく。
@籤で決まった鬼は誰か分からない。
A制限時間は1時間。場所は合宿所敷地内(除く駐車場/各個室)
B全員10分ごとに重り追加。
C捕まった者はペナルティ。また1時間内に誰も捕まえられなかった鬼もペナルティ。
「名前をハブったら可哀想ぜよ」
「ペナルティ喰らった方が可哀想だとは思わない?」
「ペナルティは代わってやるよ、ジャッカルが!」
「俺かよ!?」
「とにかく嫌だ。この1時間はのんびりしたい」
「俺達が頑張ってるのに、名前は薄情だなぁ」
「精市に言われた…!けど良いよ薄情で。とにかく嫌、10分ごとに重り追加とか死んじゃう」
駄々っ子よろしく嫌だ嫌だと言っていたら、ぽんと蔵の手が頭に乗る。
「名前は一応女の子やし、Bは免除でええやろ」
「Cも免除を希望します」
「それはあかん」
「なら出ない」
「それもあかん。ええやん名前運動出来るんやし」
「う゛ー」
「それに跡部クンも言うとったやろ?“全員強制参加”やて」
「………はぁ」
降参とばかりに両手を挙げればよしよしと頭を撫でられる。
「Bは免除だからね」
でなきゃ、やってられないじゃないか。