部活妨害原因君
「蔵?」
ぎゅっ、からの…。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」
ぎゅーっ!は、抱き付くと言うより抱き殺すみたいな包容。あ、抱き殺すって新しいかも。今度なにかに使おう。
「蔵…?」
本当に痛くて何かと思ったら、我が最愛の彼氏様は大変ご機嫌斜めでおらせられる。あれ、私なにかしたっけ?と考えていたら以心伝心。彼は口を開いた。
「昨日財前とヘタレと善哉食いに行ったやろ」
「謙也の扱い酷いな」
「うっさいわ」
「地味に痛い!」
本当にいつから彼はSに目覚めた…いや元からだった仕方ない。
最近はバイオレンスにも磨きがかかって私のライフポイントは悲鳴をあげている。
「名前の彼氏は?」
「四天宝寺中学校3年2組14番白石蔵ノ介です」
「それがなんっで四天宝寺中学校3年2組5番忍足謙也並びに2年7組14番財前光と放課後デートなんかしとるん?」
「え、光も14番?」
「せや。俺もちょっとびびった…やなくて!」
抱き直され、顔の距離が近くなる。
「浮気やな」
彼はユウジ顔負けの独占欲を誇ると思う。小春ちゃんに苦労するわねぇなんて言われたのがフラッシュバック。
「失礼な。謙也が奢ってくれるから行っただけで私の本命は四六時中、蔵から揺らいだことは無いよ」
「!」
だいたい、ちょっと会話したぐらいで妬くような心の狭い男(しかもS)を恋人にしておきながら浮気するほど私は勇者ではない。
今回は善哉の誘惑に負けただけだ。美味しいよね善哉!
「なら、あんま他の奴と仲良くすんなや」
「ん…、蔵が構ってくれるならね」
「アホ。俺は四六時中お前のことしか考えてないっちゅーねん」
何度も角度を変えて啄むようなキスと、最初とは違う優しい腕の中。
「好き」
「当たり前やろ」
互いに同じくなる体温に幸福を感じた。
「………なんやめっちゃ入りにくいねんけど」
「部室で止めて欲しいッスわー。しかも俺部長と同じ出席番号とか…名字は変えられへんのに」
「謙也に財前、どないしたんや?」
「あー、またばいね。金ちゃん、部室から離れてた方が良かと」
「ちょっと誰か行って来てや。コケシやるさかい」
「いやオサムちゃん顧問やろ。どうにかしたってや」
「謙也は俺に死ね言うんかい」
「アンタもさっき生徒に死ね言うたやないか」
「俺部活始めたいーっ!」