らいだり




合宿と言えば?


「枕投げだろぃ!」


「名前先輩も行きましょうよ!」


何やら大部屋で枕投げ大会が行われているらしい。…が。


「やだよ、眠い」


欠伸を噛み殺しながら、みんな元気だなぁなんて思う。


「名前はちゃんと守ってやるから!」


「必要無い。…あーもう、後から行くから先に始めてな」


「約束ッスよ!」


断っても無意味そうだと仕方なくそう言って、しっしと追い払う。


(飲み物買いに来たのに)


そんなことを思いながら、自販機へと向かう。
小銭入れを片手で遊んでいたら、ふと自販機の前に見知った人物。


「蔵」


「なんや名前は枕投げに行かへんのか?」


ペットボトルの緑茶に口をつけた彼はすぐに気が付いてくれた。
飲みかけのそれを一口もらって、近くにあったソファに座る。


「後から行くーって言っておいた。本当はもう眠いんだけどね」


風呂上がりは直ぐに寝たい派だ。
少し熱が冷めたらそうでもないが、今は結構眠い。


「………名前、」


直ぐ隣に座る蔵の肩に寄りかかると、酷く真剣な口調で言われた。


「今は、大丈夫なん?」


あぁ、やっぱり彼は察しが良いなんて眠いながらに思う。
立海に転入出来たことは嬉しいことだけど、そもそもの原因は………あまり人には話したくない内容だ。


「今は…、1人暮らしだもん」


質問の意図を正解に察して、出した答えに彼は少しの間の後にそっか、とだけ返す。


「立海のみんなも良い人だしね」


にへら、とだらしなく笑えば穏やかな表情で頭を撫でられた。


「こないな所で寝たら、風邪ひくで」


「うん。でも、もうちょっとこのままが良い…」


蔵ノ介の腕に抱きつくようにもたれかかっても彼は好きなようにさせてくれた。


(本当は…、)


本当はあの頃が一番幸せだった。

勿論、学校生活なら四天宝寺も立海も同じぐらい楽しいし不満なんか無い。
けれど、彼らの及ばない所は大阪に住んでいた頃の方が充実していた。


(1人は、寂しい)


今だに引きずる暖かい時間に今も焦がれているのが、立海の…テニス部みんなへの裏切りのようで決して口には出来ないけれど。















「ただいまナリ」


「あれ、仁王先輩飲み物買いに行ったんじゃ?」


「飲みたいのが無かったんじゃよ。それよりホラ、そろそろお開きにせんと明日起きられんぜよ」


時刻はもうすぐ明日に変わる。
朝寝坊なんてしたら真田の制裁を受けることなんてわかりきっていて。


「ちぇー、名前来なかったし」


「仕方ないよ英二、彼女も疲れたんだろうし」


ちゃっかり他校組も参加していたのだが、渋々ではあるがお開きとなった。
どこも部長又は副部長が怖いのは変わらないらしい。


「あー、明日起きられっかな。ジャッカル、起こしてくれよ!」


「部屋違うだろ!」


「………」


「仁王君、どうかしましたか?」


相変わらずのやり取りをしている2人をボンヤリ眺めていた彼に、柳生が尋ねた。


「…ピヨッ」


なんでもないと言うようにそう返して、仁王は部屋を出た。








「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -