き者だったり


うん、まぁ予想は出来たよね。
いくらレギュラーと準レギュラーだけとは言え、人数的にさぁ。


「労働基準法シカト!」


丸めたタオルを全力投球。
良い感じに試合後の侑士の顔面にクリーンヒット。


「名前、ようやった!」


「あ、謙也お疲れ〜」


中1以来の再会だが、蔵も謙也も覚えていてくれて。(謙也が侑士と従兄弟だとはつい先ほど知ったのだが)
2人でハイタッチを交わしていたら、顔を押さえた侑士がやって来た。


「なんで俺だけ全力投球やねん?!さっき日吉にはフツーに渡しとったろ!」


「若の顔面に全力投球したら可哀想でしょ?」


「俺は可哀想やないんか?」


「あ、謙也ごめん。ちょっと行ってくるね」


「おん、頑張りや〜」


W忍足をそのままに、試合の終わったらしい場所へ駆ける。


「よっ、」


ベンチを飛び越え着地。


「相変わらず身軽ッスね」


「あれ、赤也…はまだ試合じゃないよね。コレ頼んだ」


「…副部長に渡すヤツ、ですよね?」


「まぁ良いじゃん。宜しく」


いちいち構っていたら身が保たない。ただでさえ人手が足りないのだから、ワガママは聞いてられない。


「………試合、見て欲しかったッス」


立海陣は総じて構ってちゃんなのか、既にその台詞は幸村・雅治・ブン太・桑原から言われ済みである。

赤也の頭に手を置いてよしよしと撫でる。


「ちゃんと見てるよ。だから、格好良いとこ見せてね」


「! …はいっ!」


きらきらと目を輝かせるのが可愛い。
実際、じっくりとではないが立海のみんなの試合は合間合間で見ていたりする。


(ホントはゆっくり見たいんだけど)


なんて考えながら青学のベンチに向かったら。


「ごめん、遅れた」


「いや大丈夫だ。無理をさせて済まない」


スポーツタオルで汗を拭う手塚に冷たいタオルとドリンクを渡す。


「青学はみんな人間出来てるから全然大丈夫。ウチとか基本ワガママだからね」


苦笑しながら言えば、そうかと薄く笑われた。


「マネージャーも大変だな」


「やりがいはあるけどね。忙しい方が楽しい」


なんてほのぼのしてたら…、


「「危ない…っ!」」


「え?」


悲鳴みたいな叫び声に振り返ると同時に、危険を感じて手を顔に翳した。


−−−ぱしっ!


「うっわ…、吃驚した」


上手くキャッチ出来たそれはテニスボールで、流石に手がヒリヒリと痛い。


「おおっ!スゲェ!」


「言ってる場合じゃねーだろ!大丈夫ッスか?!」


駆け寄って来たのは海堂で、どうやら彼の打ったボールが此方に来たらしい。


「見せてみろ」


「や、大丈夫だよ?」


赤くなった掌を、自分より大きな手が掴む。
確かめるように柔らかく押されるが、特別酷い痛みは感じない。


「痛くはないか?」


「今はちょっと痛いけど、すぐに戻るよ。心配するほどじゃない」


「そうか」


手塚が手を離したあと、証明するように開いたり閉じたりを繰り返す。


「本当に大丈夫ッスか?」


「へーきへーき。気にすんなって」


駆け寄って真っ先に頭を下げる海堂に笑いながら返せば、申し訳なさそうな表情をされた。


「…スイマセンした」


「別にワザとじゃないんだし大丈夫。私は仕事あるから行くけど、頑張ってね」


そう言って先ほどのテニスボールを渡して立ち去る。


「部長、」


「なんだ?」


ひらひらと手を振る彼女の背を見ながら、彼は呟いた。


「名字先輩って格好良いッス」


「…そうだな」



その先にある、ウチのマネージャーなら良いのにという言葉は飲み込んで。







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