天宝寺と!


「謙也!久しぶり!」


「名前!覚えとったんか!」


練習が始まる前。
四天宝寺の面子が分からないからと蔵に頼んで会わせてもらおうと待っていたら、W忍足に遭遇。


「ちょい待ち名前ちゃん。なんでそんなに謙也と仲良えんや?」


「中1の時は四天生だし。同じクラスだったし。てか侑士と知り合い?」


せっかくの再会を邪魔する伊達眼鏡を見れば、ショックを受けた顔になる。


「俺らの名字から何も疑問感じへん?」


「えー、と。謙也は忍足だよね」


「せや。会った頃は互いに名字呼びやったなぁ」


「で、侑士の名字が……………何だっけ?」


「?!!」


「人のフルネーム覚えんの相変わらず苦手みたいやなー。コイツは忍足侑士っちゅう俺の従兄弟なんや」


「え?!」


「…俺は名前ちゃんに名字忘れられてたことが『え?!』なんやけど。忍足て結構珍しい名字ちゃうんか?」


若干凹んでいる侑士に、トドメが来た。


「同じ忍足でも謙也と同じクラスで良かった。侑士だったらきっと耐えられない」


グサグサグサ…ッ!
名前の言葉のナイフにより、侑士は大ダメージを受けた。


「残念やったな侑士!」


「残念なんは先輩らの会話ッス。早く紹介したって下さい」


そんな時、生意気そうなピアス少年が現れた。


「光、それやと名前まで残念みたいやないか」


その彼と一緒について来た蔵が咎めれば、素直な謝罪をされた。


「スイマセン名前先輩を悪く言うつもりはなかったんすわ」


「気にしてないよ。君は?」


「2年の財前光ッス。光で良いッスわ」


そして次の瞬間、小柄ながらも強い力が飛び付いて来て後ろに倒れかけた。


「そんでワイが1年の遠山金太郎や!金でええで!」


「おー可愛い可愛い。でも痛いから離しておくれ」


ぎゅーっと無邪気に抱きついてくるのは可愛らしいが、如何せん背骨が悲鳴を上げる。


「ほんっと可愛いわねー!アタシ小春って言うの、仲良くしましょ!」


「小春は俺だけのやさかい仲良くせんでええ」


「え、どっち?」


初めて接する人種に戸惑っていたらこの人達は放っておいてええっすわと光に耳打ちされた。


「石田銀です。よろしゅう頼みます」


「おお!良かったまともな人居た」


流石四天宝寺、変な人ばっかりだなんて思ってたら、普通にまともな人も居たことに安心した。


「あとは千歳っちゅーのが居んねんけど、今はどっか行っとるわ」


「アバウトだなー。まぁ良いや多分覚えたから」


改めて確認し終わると、それより、と。


「ええ加減離れえや金太郎?」


「うわ!毒手は嫌やー!」


腕の中で猫みたいに擦りよっていた金太郎の首を掴んで引き離された。


「なんや白石の彼女やないんやろ!」


こそこそと名前の後ろに隠れながら彼は言った。


「え?部長の彼女とちゃうんですか?」


それに喰いついたのは意外にも光で。


「? 別に付き合いは長いけど付き合ってはないよ?」


そう返せば、へぇと何故か少し嬉しそうになられた。


「名前、意外と薄情やな…」


「嘘はよくないよ」


「せやせや!名前は白石のモンやない!」


「金ちゃん、腕の力抜いて。私の内臓的なものが悲鳴上げてる」


「確かに俺の彼女やないけど!部長命令や名前に手ぇ出すんは止めとき」


「職権乱用ッスわー」


「名前ちゃんたら罪な女♪」


「あー、でも俺も下手に手ぇ出すんは止めるで」


「なんでッスか謙也さん?」


つい、と謙也は無言で指をさす。
指し示す方向には。



「名前、おいで?」



常勝立海大が、魔王陛下。
とても素敵な笑顔と、とても真っ黒なオーラの中でご光臨なされていらっしゃった。



「ホント、罪なやっちゃ」





頬を引きつらせながら、白石は口の中で呟いた。








「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -