再会から始まったり
月日が流れるのは早いもので。
あれから1週間経ちました。
−−−午前9時。
バスの中で欠伸を噛み殺して、ふと隣を見れば端正な顔立ちと目が合う。
「眠いなら寝れば?着いたら起こしてあげるよ………勿論キスで」
「…遠慮する」
もはや移動時に私の隣に座るのは決定事項らしい。特に問題はないから構わないが。
(4泊5日、か)
シートを少し後ろに倒しながら、ボンヤリと思った。
持参のタオルケットと柳生から借りたアイマスクをすれば、おやすみと言われた気がした。
×××
「まぁ、宿泊施設その他諸々は跡部が何とかしてくれるらしいから」
「それで良いの…?」
投げたどころか全力投球でぶん投げた説明だが、他はみんな納得している。
「まー、氷帝だしな」
「次元が違うからな」
「…それで良いんだ」
ランボル●ーニに乗る男なのだから金持ちであろうことは容易に想像出来たが。
「それからもしかしたら参加校が増えるかもだって」
「え、やだ」
今のところ予定では立海に青学、氷帝だ。
参加校が増えるということは、仕事も増えるということで。
「安心せぃ、名前は俺らのじゃき」
「いやそこは問題じゃないし」
頼むから可愛いマネージャー連れて来いよなんて祈った。
×××
「ん…」
何となく目が覚めて、アイマスクをあげたら…、
「チッ、………おはよう」
舌打ちしたよこの魔王。
「何してんの…?」
やたら顔が近い。まさか寝る前に言った台詞を実行する気だったのか。
「おはようのキ「ゴメンなんでもない。黙ろうか」
背もたれを元に戻して外を見れば、もう直ぐ到着らしい。
「氷帝はもう着いたってさ」
「ふーん」
まだ体に残る倦怠感に、その場で両腕を使って伸びをする。
「…あんま、俺らから離れるなよ」
ポツリと呟かれた言葉の真意を、私は分からなかったけど。
「あー、名前に丸井君だC〜っ!」
がばりっ。
バスを降りたら、ジローに襲われました。
ちなみにブン太はさり気なく避けていた。
「おー、取り敢えず離しておくれ」
「A〜、せっかく久しぶりの再会なのにー」
ぷーっと膨れる様子は可愛いが魔王陛下の無言の視線が痛い。
これが平気なジローは実は強者に違いないと後にブン太が語るのはさておいて。
「青学ももうすぐ着くらしい。それから…」
何やら精市と景吾が語り合ってる間に氷帝面子と挨拶を交わす。
「名前ちゃん、会いたかったで…!」
「若ー、会いたかったよ!」
「お久しぶりですね」
「…俺泣かへん」
「侑士、ウザイ」
「激ダサだな」
「ちょっと気持ち悪いですよね」
「ウス」
(氷帝も仲良いなぁ)
そんなやり取りをしていたら。
「みんなー、四天宝寺も来るって」
精市がそう声をかけた。
「間に合ったのか」
「合わせたんだろうな。合同練習はデータを収集する貴重な機会だ」
「名前の仕事が増えるなーって………名前?」
ブン太が冷やかすように言ったが、それに対する反応は無く。
(四天宝寺…って、)
急に、楽しげな声が聞こえてきた。
「コシマエー!どこやー!」
「金ちゃん大人しくしとき」
此方ではあまり聞かない言葉遣いと…、諫める声音は知っているもので。
「色々無理言ってスマンかったな」
常に左腕に包帯をした知り合いなんか、1人しかいない。
「蔵…?」
「蔵って、名前?!」
誰かが問う声は聞こえない。
私は彼へ、駆け出した。