料理は出来た方が良い
「昨日はゴメーワクをおかけしました。主にジャッカルに」
「いや、分かってくれただけで良いんだ俺は」
ぐすっ、と鼻をすすってジャッカルは目元を片手で隠した。
………よほど昨日は大変だったらしい。
「なので、お詫びにお昼なんぞを作って来ました」
ひょいと重箱を持ち上げれば、昨日結局人の家で天才的本格クッキングをしていってしかもその半分を自らの胃に納めた糖尿予備軍と今朝の出会い頭に全力で抱きついてきて「けしからん」と真田に叱られた不憫な後輩からの歓声があがる。
「「おぉ〜!」」
「ねぇ名前、」
しかし、他の面子と違って我らが魔王様は若干不満らしい。
「俺用の愛妻弁当は?」
「まだ結婚すら出来ない年齢で何を言う」
「それ俺のッスよ!」
「代わりはやるから………ジャッカルが!」
「俺かよ?!ていうか俺からも盗っただろ!」
「こーゆーのは早いモン勝ちぜよ」
本気で争奪戦を繰り広げるお子様組を眺めながら、保護者組は溜め息をつく。
「貴様ら、食事くらい静かにせんか」
「楽しむのは構いませんが、口に物が入っているのに喋ってはいけませんよ」
「コイツらがこの食事中に静かになる確率12%…、まぁ偶には良いだろう」
「あ、名前それ取って」
「コレ?」
それなりの量を作ったハズなのに流石は育ち盛り。あっという間に重箱は空になっていく。
それから数分後。
『ご馳走様でした』
「お粗末様でした」
きちんと両手を揃えて食事は終了。
広げた重箱を片付けるとそれぞれから感想が来た。
「はーっ、美味かったぜぃ」
「お前は絶対に食べ過ぎだけどな。俺のまで盗りやがって…」
「名前先輩、また作って下さい!」
「気が向いたらね」
「次に作るのは俺専用ナリ」
昨日いなかったせいか、今日はいつもより雅治との密着率が高い。現在進行形ですり寄られている。
「しかし、本当に美味しかったですよ。是非ともまた食べたいものです」
「うむ。名字はなんでもソツなくこなすからな」
頷きながらの真田の言葉に、精市がにこりと言った。
「理想のお嫁さんだね」
「…母さん母さん、兄さんがおかしくなっちゃったよ」
「俺に振るな。というか、家族設定は続けるつもりか?」
近親相姦じゃの、と呟いた雅治の頭を紳士が叩いた。