prologue
私は人生で5回転校を繰り返している。
イジメが原因で、とかではない。単に保護者の都合だ。
…でも、これで最後。
2年の3学期からなんて時期としては半端過ぎるが、構わない。
もう2度と転校なんてするかと思っていた。
「拒否権があると思ってるの?」
貴方達に出会う、それまでは。
ネクロポリスで愛を知る。
「おはよ!」
ぴょーんと抱きつこうとする朝からハイテンションな友人を片手で制する。
「お早う。何組だった?」
本日は始業式。
3年に進級して新しいクラスへと変わるため、貼り紙の前は沢山の生徒が詰め寄っていた。
「名前はBだったよ。で、私はC!」
「…離れたのがそんなに嬉しい?」
まぁ、多分違う理由で喜んでいるのは分かるが何となく気にいらなくて頬を抓る。
「いたひいたひ!違うよ、名前と離れたのは残念だけど幸村君と同じクラスなの!」
「幸村君?」
「男子テニス部の部長!…って何回も教えたでしょ」
「……………あぁ、友人がすれ違っただけで発狂寸前まで喜ぶ人?」
そういえば休み時間にいきなり全力で抱き締められて何かと思ったなぁ、なんて思い出す。
中途半端な時期に転入した為、立海の常識にはイマイチ疎い上に人の名前を覚えるのは苦手だ。
「あんなに毎日言ってるでしょ!あ、でも名前は仁王君と丸井君と一緒だったよ」
「誰か分かんないし激しく興味無い」
そう返すと、2人共テニス部の云々と語り始める友人。
此処で説明を切ると無駄に長くなるのでスルー。まだ短い付き合いだがこの学校で親友と呼べるのは彼女ぐらいだろうか。
(まぁ、他の子は…)
男子テニス部について説明する友人からちらっと視線を外して、溜め息を吐いた。
今時っぽい女子中学生(まぁ同級生ではあるが)が嬉しそうな声をあげる。
「やった!名字さんと一緒だ!」
(女子にモテるのも…、複雑)
つまりはそう言うことなのだ。
「そういえば今日は剣道、行かないの?」
いつもより荷物が少ないことに気付いたらしい友人はそう尋ねる。
「今日は行かないよ。ミーティングらしい」
私は剣道部ではない…のだが、まぁ何やかんやで偶に顔を出す。
「じゃ久しぶりに帰りは一緒ね!」
本当に嬉しそうな顔をされて自然と此方の表情も綻ぶ。
「当たり前」
その様子を見ていた周りの女子の反応は見ないことにしておいた。