念日とは



「お」


見つけたのは本当に偶然。
どこか洒落た雰囲気を持つ水彩色鉛筆のセット。


「………」


私に画才はない。
けれど、水彩画を得意とする人物を思い出して…それを手に取る。


(…あ、思ったより高くない)


別に記念日でもなんでも無いのに、誰かの為に買い物をしたのは多分それが初めてだった。















「でもさぁ?」


「ん?」


ソファに座りながら絵を描いている精市の膝の上に頭を置くという、彼に対する嫌がらせのような体勢のままで声をかければ描いていた手が止まって見下ろされる。


「使ってないよね、せっかくあげたのに」


「あぁ、アレ?」


近くの机の上にあるのは、包装がとかれただけで買った時と同じ状態の水彩色鉛筆。


「やっぱりせっかくなら使って欲しいなーっていうのがあげた側の心理なんだけど」


少し拗ねたように言えば、ちょいと鼻を摘まれた。多分この行為に意味はなく、しいて言うならつまみたかった程度だろう。


「んー、その気持ちはわかるんだけどね」


鼻をつまんでいた手は、今度は頬に触れてきて女よりも滑らかな肌触りにちょっと嫉妬。


「名前が記念日でも無いのに俺の為に買ってきてくれたのが嬉しくてさ。…勿体無くて使えない」


「………」


ふわり、とした笑顔を浮かべられて今更ながらに綺麗だな、なんて思う。

それと同時に、この表情が一番好きだとも。


「精市、」


「なに?」


「愛してる」


我ながらノンオイルよろしくサラリとした告白だったが、彼も負けず劣らずサラリと返した。


「俺の方が、君を愛してるよ」



記念日でも無いのに、なんて言ったけど。

多分、



何気なく過ごす1日1日が、私達だけの記念日なのです。















……………

ちょっと某曲がイメージソングに。今作の裏テーマは“キスをしない”でした。

手塚・跡部・幸村…と各部長達が来たので次は管理人的大本命白石の予定です。






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