青学ご案内
時間は少し遡る。
「あれって、氷帝…だよな?」
「だな」
桃城と海堂はテニスコート内から、その姿を見た。
「いや、でも全くこっちに来る気配が無い」
「何しに来たんだ?」
「どうした?」
コソコソと話す2人の元に乾がやって来た。
「氷帝の奴らが来たっぽいんスけど…」
「氷帝?…あぁ、剣道部が合同練習らしいな」
「いや、そうじゃなくて…」
「まぁ、俺達は今日は別の目的で来たからな」
「別の目的?」
大石が怪訝な表情を返すと、名前は後ろから抱き締められた。
「コイツを迎えに、な」
「景吾、暑い鬱陶しい離せ」
実は既にシャワー室にて汗を洗ったので汗臭くはないが、それでも密着されるのを拒否したくなる気温だ。
「え、なになにもしかして彼女さ「じゃない」…じゃあ何?」
菊丸が嬉々として尋ねる前に、バッサリと切り捨てられた。
「立海のテニス部マネージャーだよ〜。俺達、気に入っちゃったから迎えに来たんだ」
「悪いが益々事情が分からないんだが…」
慈郎の台詞だけで事情を把握するのは難しいだろう。そもそもマネージャーがなんで青学で剣道に励んでいるのかという話だ。
「んー、まぁかくかくしかじかで…」
「なら、俺達のことも紹介した方が良くない?」
「あぁ合宿では世話になるだろうからな」
「え、アレって青学もなの」
「知らなかったのかよ」
我らが部長は未だに合宿の話をしない。日付や期間すら全くわかっていないのだ。
「A〜、青学の連中になんか渡したくないC〜!」
「いや、名前は立海のマネージャーだぞ」
岳人正解。
「あ〜、じゃあお願い出来るかな?人の名前覚えるの苦手だから、先に知っておきたいし」
−−−というワケで青学テニス部にご案内。
大石(副部長らしい)が部長に話してくるというので英二と対談中。
「英二と大石がダブルス?」
「青学の黄金ペアだよん」
ちなみに氷帝面子はそれぞれ自由行動。景吾なんかは大石と一緒に行ったし、ジローは私の膝の上で寝ている。…ちょっと重い。
「待たせて悪かったな、名字」
「ん?いやむしろ急にお願いしてゴメン。そして更に申し訳ないんだけどジローが起きないからこのままでも良い?」
「名前ちゃんの膝枕!羨まし過ぎや「「侑士五月蝿い」」…おん」
そんな様子に大石が苦笑していると、一瞬顧問ですか?と問いたくなる大人びた人を筆頭にぞろぞろとレギュラー陣(であろう)が現れた。
「あ、さっきの」
「やっぱり立海生スか。どっかで見たマークだと思ったら」
先ほど会った帽子少年は事も無くそう言って、英二が詳細を聞きたがったが…いや特に言うほどの出来事はなかったよ?
「部長の手塚国光だ」
眼鏡の年齢詐称さんは手塚というらしい。如何にも真面目そうだ。
「立海マネージャーの名字名前です」
膝でジローが寝ている為立てないから、見下ろされる形になる。
「名字名前…立海大附属中3年B組。剣道においては真田と引き分ける実力を持つが何故か剣道部からの勧誘を断り続ける。女子人気が高い為一部男子からのあだ名は“ホスト”。
マネージャーになったきっかけは同じクラスにしてテニス部の仁王からの推薦による」
「おぉ、自己紹介の手間が省いた。そして君は蓮二的だね」
この時の彼女は知らない。
乾以外の青学陣の心が1つになったことを。
(((ストーカー的だとは思わないのか…?)))
流石は立海、と言ったところだろうか。