それは爽やかな昼下がり
「ねぇ、付き合おっか?」
そんなコンビニに行ってくるって言ったらじゃあ俺も行くの付き合ってやるよ的な、付き添いに来るみたいな軽いノリとは裏腹にその目は笑っていなかった。
屋上にて。背中は壁。目の前には女子人気の高いテニス部の魔王…おっと間違えた部長である幸村精市。そして私の顔の横には彼の腕があって、しかもちょっと恋人同士でもないのに距離が近過ぎではないでしょうか?
「え、お断り「出来ると思ってる?」
おい誰だ、この男を“儚げで爽やかな王子様”とか最初に勘違いした奴。今すぐ屋上に来いよそして助けて下さいマジでお願いします300円あげるから!
「俺、君のこと好きみたいなんだ。…だから俺の物になれ」
告白で命令形って吃驚じゃないですか。
「あの…何故?」
びくびくしながらそれだけ尋ねれば、キョトンとした表情で言われる。
「人を好きになるのに理由がいるの?」
某ゲームの主人公のキメ台詞をパクったような台詞だがその問いに私は声を大にして言いたい。ていうか言った。
「いるだろ!」
「五月蝿いなぁ…」
いや五月蝿くさせてるのは誰だよなんて苦情は、彼の唇によって塞がれた。
「な…っ!」
体温上昇。赤面。
ちょっと待って何しやがったこの魔王?!
「あはははかっわいー」
笑い事じゃないよ?初めてだよ?ファーストキスだよ?いや子供の頃に近所の飼い犬としたけどさ!
「俺がこんなに好きなのに、逃げられると思ってるの?」
ぎゅっと抱き締められ、耳元でそう囁かれた。
「〜〜〜っ!!」
私の脳内オーバーヒート。逃げようとしてもしっかりと回った腕が細いクセに力強くて。
「逃がさないよ、名前」
セカンドキスも、奪われました。