我儘な弟達
「…ってことだから」
「了解。あ、帰りは迎えだから大丈夫」
「分かった。じゃあね」
剣道部であろう子と何やら話していた名前が席に戻ってきた。
「………」
「仁王、拗ねんなって」
「別に拗ねとらん」
(いや拗ねてるだろぃ)
今週の土曜日、名前は剣道部の合同練習に参加するらしい。
幸村君曰く合宿前に1日ぐらいは好きにさせてやっても良いかな、って考えらしいしそもそも無理言ってマネージャーになってもらったんだからその判断は間違ってないと思う…のだが。
(コイツはなぁ…)
その話を聞いて拗ねたのは雅治と赤也。
まぁ赤也は名前が宥めてすぐに元に戻ったけど。
「えいっ」
「プリッ」
不意に名前は仁王の鼻を摘む。(結構よくやるよな)
「なんじゃき…」
「そんな拗ねるなって。1日だけだよ?」
「…嫌なもんは嫌じゃ」
「………」
苦笑する彼女と視線が合う。
多分同じようなことを思ってる筈だ。
「!」
するりと仁王の腕が動いたと思ったら、名前を自らの膝の上に乗せていた。
「ちょ、仁王!」
「雅治?!」
予想外の行動に慌てる。なに抱き締めてんだよ!
「これで許しちゃる」
よし、このことは幸村君と柳生にチクろうなんて考えて俺は溜め息をついた。
「浮気と怪我だけは絶対に駄目だからね」
「はいはい、ダーリンこそ部員に八つ当たりしないでね」
うん、…疲れた。
ちょっと合同練習(しかも半日)に行くだけなのに雅治や精市に色々言われまくりである。
「なんでこう、過保護なのかなぁ…?」
ベンチに座れば蓮二が隣に立っていた。
「我儘な弟を持つと大変だな」
「助けておくれよ兄さん」
「シスコンだと思って諦めろ」
「ちょっと待った、俺は弟というより頼れる父親だろ?」
「それは真田のポジションでしょ」
なんて話をしていたら赤也とブン太も参加してきた。
「副部長が父親なら部長が母親っすか?」
「いや、幸村君は自分が一番な長男だろぃ。母親は柳」
「あははひっどい弟だなぁ」
「ふむ中々面白いな。名前はお前らの姉か?」
「こんな弟要らない」
そんなことを言ったら、精市に頬を抓られて地味に痛い。
「柳生先輩も兄貴っすね。ジャッカル先輩は?」
「ジャッカルは飼い犬だろぃ?」
「黙って聞いてりゃお前な…!」
「あ、桑原いつの間に」
そうやって一通り笑った後、練習が始まった。