狙い撃つのは自分
「なぁ、お前俺になんの恨みがあるんや?」
「特に何も?」
「じゃあこの状況は何やねん!なんでエアガンの銃口を俺に向けとんのや!しかも玩具にしちゃクオリティ高いな!」
「エアガンじゃなくてガスガンだよこれ」
「あぁガスガンか…ってそっちのが危ないわ!」
朝っぱらから物騒な玩具を俺に突き付ける彼女はポーカーフェイス。
それはいつものことだが、ポーカーフェイスで物騒な玩具(ガスガンてお前…)を手にしてその銃口を俺の胸に突き付ける意図が読めない。
(まぁ、偶に笑ったりするのが可愛いんやけど…やなくて!)
「零距離射撃ってさ…、」
「いや何の話始める気やねん」
俺の心臓と銃口の距離は零になった。
「絶対に外したくないんだよ」
「は?」
アカン、こいつが何を言いたいのか全然分からへん。
「私ね、射的とか狙い撃つの苦手なんだ」
「俺の心臓狙い撃つ気なんかい…」
嗚呼、でも君になら捧げても良いなんて本当に恋は盲目。
「撃ちたいワケでは…ない、かな」
ただ、と。
「狙ってはいるけど」
「は…?!」
次の瞬間には容赦なく引き金をひかれ、五月蝿い発砲音が鳴った。
−−−パンッ!!
「…って、驚かすなや!弾入ってないんかい!」
「入ってた方が良かった?」
「んなワケあるか!」
しかも、先ほどの発砲音に吃驚したクラスの連中はこちらを見ていて。
そんなことを気にした風でもなく、フワリと彼女は笑った。
「うん、蔵が痛いのは嫌だな止めよう」
「…っあんな、そんな笑顔ホイホイ使うなや。期待してまうやろ」
それに、あんな風に言わないで欲しい。
それは自分と同じ気持ちなのかと、都合良く解釈してしまうから。
なんて、思った、のに。
「私は、蔵のこと好きだけど…?」
「…はぁあ?!」
「その反応は酷いと思う」
「あぁスマン…てホンマかいな?!」
「嘘でそんなこと言わないけど…嫌?」
「…ッ」
初めて見た、一瞬だけ揺らぐ瞳。
(嫌なワケ…)
答える代わりに思い切り抱きしめれば、戸惑いの後に優しく抱きかかえされた。
「お前に狙われて、逃げられる奴なんておらんよ…」
自ら零距離になるのだから、絶対に外さないで欲しい。
「好きやで」
引き金を引いたのは、誰?
……………
素敵企画『垂直線、平行線』提出。