理性は終了しました。
「名前?」
「侑士…」
真っ赤な頬に、潤んだ瞳。
濡れた唇から吐かれるのは荒い息遣い。
(ちょっ、これはアカンとちゃうん?いくら俺かて)
片想いの相手の扇情的な姿に平静を通せるほど大人じゃない。
むしろ…真っ盛りなお年頃だ。
「ほん…とに、」
「…っ」
ベッドから崩れた彼女を支えれば、小さな手が服の胸元をぎゅっと掴んで上目遣い。
(あ、ホンマに俺の理性が…)
ヤバい、とか思った時。
「吐きそうなぐらい気持ち悪い」
「……………」
うんうん。
彼女は現在38℃のお熱で。
俺はそんな彼女を見舞いに来ただけなのに何いかがわしいこと考えとんねんとセルフで突っ込む。
「ほら、ちゃんと薬飲みなや」
「ご飯食べたくない…」
サイドテーブルには手付かずのお粥と水、薬が置いてあった。
「少しでもええから、な?」
「無理ぃ…」
ぐったりとベッドに倒れる名前。
どうせなら俺が押し倒したいとかいう思考は気合いで遮断。
体を抱きあげ、口元にお粥を運ぶ。
「あーん」
「…あー」
「!」
無防備に口を開けるのがあぁもう本当に可愛い。可愛過ぎてツラいなんてレベルじゃない。
ゆっくりと飲み込むのを待って、もう一口。
「大丈夫か?」
「んー、」
本当ならもっと食べてもらいたいが、無理もさせられないだろうと食事は終了。
「じゃあ薬飲んで大人しゅうしとれよ」
ぽんぽんと頭を叩いて帰ろうとすれば、くいっと裾を掴まれた。
「お薬は、飲ませてくれないの…?」
「………」
俺の理性終了のお知らせや。
「…ったく、」
錠剤と水を口に含んで、名前の頭を引き寄せて深く口付ける。
「ん、ん…ぅ」
涙に潤んだ瞳と目が合っても、止められない。
「…っは、」
口を離せば、真っ赤な頬が更に赤く染まって。
愛らしい唇が艶っぽく濡れていて、堪えきれずに舐める。
「好きやで、名前」
だから、と。
「あんま煽んなや」
もう1度深くキスをしてぼんやりとする名前を寝かせると、そそくさと部屋を出て行った。
熱のせいで記憶の無い彼女に良い笑顔でお礼を言われ…彼が胸を痛めたのは翌日のことである。