構って欲しいの!
あの後なんとか氷帝メンバーの名前は覚えたものの時間的にはお開きで、惜しまれながらも神奈川に帰るバスの中。
「名前先輩は良い人過ぎっす」
「もっと俺らに構えよな」
「………ねぇ、なんでそんなに拗ねてるの?」
「名前が俺を構わないからじゃ」
酔うから嫌だと言ったのに、強制的に後ろの席で両サイドには精市と雅治が引っ付いてくる。
「見苦しいぞお前ら」
「名前に抱きつかれた男は黙ってなよ」
「羨ましいのう真田」
ぶーたれる彼らに喝を入れてもスーパーご機嫌ナナメな魔王と詐欺師には効果がない。
「なー、名前明日は暇か?」
「超忙しい」
明日は日曜日。
そしてテニス部はオフだ。
「ブンちゃんナイスじゃ。明日は名前の家に行くぜよ」
「や、明日忙しいから。無理」
「えー、俺達より大事な用ってなんすか?」
「そういえば真田、明日の剣道部は急用でオフになったらしい」
「む、そうか」
「蓮二それ本当に?!」
「やはり聞いていなかったか」
「…ていうかさ、名前はテニス部のマネージャーなのに俺達と遊ぶよりも剣道部に顔出すの優先させる気だったの?テニス部のマネージャーなのに」
(((2回言った…)))
「………わかったよ、予定空いたから良いよ」
渋々と降参すれば、先ほどまでの黒いオーラは一気に消えてなくなった。
「じゃ、楽しみにしてる」
そうやって爽やかに笑うから、周りの女子は彼が魔王だなんて気付けないんだろう。
ピンポーン♪
翌日、ベッドの中でごろごろしていた午前10時。
「何時頃来るか連絡してよ…」
溜め息混じりで玄関を開ければ、精市と蓮二、雅治にブン太と赤也が現れた。
「…ていうか蓮二と赤也は予想外なんだけど」
「えぇ!俺は来る気満々だったっすよ!」
「迷惑かとも思ったがコイツらだけというのもどうかと思ってな。後は単なる好奇心だ」
「そんなことより上がろうぜ」
「ブン太の家じゃないけどね。まぁいいや、上がりなよ」
何かもう面倒臭いとばかりに促せば、嬉々として彼らは入ってきた。
「邪魔するぜよ」
「お邪魔します」
「適当に座ってて…、特になんもないけど」
そう言ってリビングに通せば、雅治とブン太が真っ先にソファにダイブした。
「おー、良いソファだ」
「此処で寝たいナリ」
「リラックスモードに入るの早っ!」
「きれーっすね」
「ふむ、掃除も行き届いているな」
赤也と蓮二は常識をわきまえているらしい。
「ねぇ名前、」
背後の精市が笑顔で言った。
「寝室は?」
「いくら精市でもぶっ飛ばすよ」
同じくらいの笑顔を返した。