度目の彼女




「名字、さっき凄い音がしたが何があっ…、」


試合を終えた真田の元に全力疾走。そのまま彼に飛び付いた。


「ちょっと名前、なんで抱きつくのが真田なの?」


「真田羨ましい…!」


「ふむ、真田でも年相応の反応が出来るのだな」


「…、名字取り敢えず離れろ。そして何があったか説明してくれ」


いきなりの事に動揺したが、不器用に名前の頭を撫でれば涙目な瞳がこちらを向く。


「不審者…、」


「は?」


「不審者に、セクハラされた…」



ピシッ、と空気が凍った。



「…いや、名前。お前竹刀が無くても強かったのではないか?」


蓮二の問いに、だから…と続ける。


「背負い投げちゃって…、やり過ぎかなって謝ったんだけど…なんかヘッドシザーズとか言われた」


本人も混乱してるようでイマイチ話が掴めないが、先ほどの音は彼女が正当防衛した為らしい。


「名前、」


立海メンバー(主に魔王)の放つオーラがどんどん黒いものと化していく中、勇者が現れた。


「ちょっと跡部。俺達のお姫様を泣かすってどーいうつもり?」


魔王の攻撃ブラックオーラに表情を引きつらせながらも勇者跡部は言う。


「それに関しては今諸悪の根源に制裁を加えてる。…名前、悪かったな」


「………景吾は悪くない」


とは言いつつも彼女は首だけで跡部を見て、真田から離れようとしない。


「で…、結局何があったんだ?」


先ほど名前から聞いた話では状況が理解出来ない。

蓮二の問いに、答えにくそうに彼は話し始めた。















「最低ですね」


「激ダサとかいうレベルじゃねーな」


「…ウス」


「初対面でそれはないC〜。せっかく試合が終わったら声かけようと思ってたのに」


「………」


現在忍足には発言禁止令が出されている。その為散々な言われようにも反論することを許されない。


「まさかのヘッドシザーズ…って。背負い投げもされるっつーの」


「ですが、綺麗な背負い投げでした。多分相当強いですよ」


なんて氷帝陣が話していたら跡部が戻ってきた。その背に隠れるように、名前も。


「コイツは竹刀持たせたら真田と張るらしいからな。

忍足、発言禁止令解除だ。また変なこと言ったら立海の魔王に何されるかわかんねーから細心の注意を払えよ」


「流石に言わへんわ!

…名前ちゃん本当にスマンかったなぁ。悪気があったワケやないねん、ただちょっと自制が効かなくなってもーたんや」


90度に頭を下げれば、何故か少し落ち込んだ様子の名前が応えた。


「私も、吃驚したとは言え素人相手に背負い投げて…ゴメンナサイ。やり過ぎたと思う。
それから、氷帝の人達にも迷惑かけちゃって…」


落ち込んでいる理由は冷静になって振り返ったらやり過ぎだったよな…と猛反省しているのと、真田にその点を指摘されたからだ。(他の立海陣は全員“正当防衛だ”と言っていたが)

しょぼん、とした彼女に………庇護欲が煽られる。


「名前さんが謝る必要はないです」


「全面的に侑士が悪い」


「迷惑かけたのは俺達の方だしな」


「気にする必要ないC〜!」


「ウス」


「この人に貴女が心を痛める価値はありませんよ」


「…なんや長太郎が酷い気がすんねんけど」


「自業自得だろ」


氷帝の面々に励まされ、名前はふわりと笑った。


「ありがとう」


『!!』


思いがけない不意打ちに全員が一瞬止まった。


「でさ、言いにくいんだけど…まだ半分ぐらい名前分かんないから紹介してもらえないかな?」



そして次の瞬間には、全員がずっこけた。







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