17
「名前ちゃんって跡部クンと付き合っとるん?」
「げほっ!ごほっ!」
白石の素朴な問いかけに、私は飲みかけのアイスティーで盛大に咽せた。
「それはナイ!」
息を整え直し、彼に全力投球で抗議した。
結局、時間も遅いからとタロちゃんの奢りで急遽泊まることとなった。ただ、直ぐには無理だからと食事でもして来いと言われ…やはりタロちゃんの奢りでバイキングへと来ていた。それで、せっかくだからと四天宝寺も誘って…タロちゃん…いや榊先生よ、アンタなんでそれだけの金を持ちながら教師になったのか。
「えーっ、じゃあ名前ちゃんは誰がタイプなん?」
「小春はアカンからな!俺のやさかい!」
「一氏黙っとれや」
「先輩らうっさいわ。けど、確かに気になりますね」
跡部と滝が明日のスケジュール調整で居ないのを良いことに、私は四天テーブルへと拉致られた。
「あ、俺は名前ちゃんならいつだって大歓迎やで!跡部クンが彼氏やないならいっそ…」
それはもう良い笑顔で白石は言ったが、私は丁寧に頭を下げた。
「ごめんなさい私変態は生理的に無理なんです」
「ちょっとした冗談やないか」
「部長、目がマジでしたわ」
ストローに口付けたままの財前が言う。うん、ちょっと怖かった。クラウチングスタートで逃げ出してしまいたいぐらいに。
「でも、名前ちゃん可愛いから言い寄られることも多いんじゃないの〜?」
興味津々と言った目で小春ちゃん(何かこの人嫌いになれない。…何でだろ)が問いかけてくる。
「言い寄…一部の常識倒幕派以外は…まぁ、たまにクラスの男子からお菓子もらうぐらい?」
今まで一度たりとも下駄箱にラブレターが入ってたことも放課後呼び出されたこともない。ただ、バレンタインには男女問わずチョコを貰う…のは子供扱いされてるからだろう。
「ロリコンやと思われんのが…「財前?要らない骨は何処かな?」…ホンマにスイマセンした」
1つ下のくせに寝言をのたまいやがった財前に微笑むと、彼は席を立ち頭を90度下げた。
「かわええからモテそうやのに…氷帝のメンズは何やっとるん?」
−−−そんな小春の疑問は、すぐ隣のテーブルの氷帝メンズが答えていた。
「まぁ、跡部のお気に入りってだけで相当な牽制になっからなぁ」
話のきっかけはともかく、そう言ったのは宍戸だった。
「名前先輩は少し無防備過ぎですよ。俺が何回妨害したと思ってるんですか」
サラリと告げられた真実に、日吉は小さく呟いた。
「………たまに居るお前を避ける奴ってそういうことだったのか」
「長太郎…お前、」
まさかのタイミングでチームメイトの知ってたけど目を逸らしていた一面を改めて直視させられるとは。
カミングアウトされる前から、テニス部では周知の事実だったけれど。