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「防犯ブザーは持ったか?」
「………」
「良いか?何かあったらすぐに連絡しろ。それから、向こうについた時もだ」
「………」
「怪しい奴には近寄るな。欲しいものくれるからって行くんじゃねーぞ、後から俺が買ってやるから」
「………あのさ、跡部」
真剣な眼差しで子供に言い聞かせる注意事項を改めて私に教えてくれる、しかもさり気なく欲しいものを買ってくれる約束までしてくれた跡部に本気で右ストレートを贈りたい。
「初めてのおつかいかっつーの!神奈川ぐらい余裕で行って帰ってくるから!」
まぁ、県を越える初めてのおつかいなんか聞いたことが無いのだけど。
×××
話は少し遡る。
「というわけで郵送だと間に合わなくてな。悪いが立海に届けてもらいたい」
「何が、というわけですか完全にタロちゃんのミスじゃないですか。ていうかこの後、出張なんだからそのついでに神奈川寄れば良いじゃないですか」
「時間が無くてな。何より、立海にはヘリポートが無い」
「横浜港に空母でも呼んで下さい」
いや話の論点がおかしい。そもそもフツウ学校にヘリポートはないだろう。いや航空系専門にはあるのかもだけど。
「とにかく頼んだ。跡部には私から伝えておく…以上だ、行ってよし」
「タロちゃんのランボルギーニ…パンクしないかな」
高級車がパンクする様ってなかなかシュールではなかろうか。
×××
「立海にも連絡は入れてあるし、駅の方に迎えを寄越すって言ってたから大丈夫だと思うけど気をつけてね」
「はーい」
心配性というか過保護な跡部を差し置いて…ていうかそんなに心配ならお前が届けに行け…たっきーに大体の位置や道のりなんかを聞く。
「跡部さん、俺心配なんでついて行きますよ」
さてそろそろ行くかなんて思っていたら、長太郎が来た。
「駄目に決まってんだろーが。ライオンは我が子を谷底に突き落としてだな…」
「跡部の場合、名前に対しては突き落とすにしても…着地点に高性能クッション材とエリート医師集団スタンバイさせて、命綱つけてゆっくり下降させるよね」
「ていうか1人で神奈川にお使いに行くのってどんだけ難易度高いの?あそこはラクーンシティか」
神奈川がウイルス感染してゾンビだらけになったなんてニュース聞いてないけど。
「とにかく、行ってきまーす」
付き合ってたら、本当に1人歩きの危ない時間帯になってしまいそうだ。