07
「長太郎のドリンクは半分にしよう。水資源を節約するために」
「さっきのまだ根に持ってたのか…。あ、俺のは大丈夫だろうな?」
「がっくんに嫌がらせするなんてそれは身長差があと1cm離れた時だけだよ」
「クソクソ!俺はもっと身長が欲しいんだよ!」
「伸びた分の身長を寄越せ」
そんな不毛な争いを一方的に終わらせて、ボトルを閉める。長太郎だけ中身が半分だ。一気に飲みながら物足りなさに苦しむが良いさ!………本当は、さっき青学で見かけた謎の液体を使用しても良かったが…なんか…見た目的に殺人事件が起きそうだったから自重した。
「名前先輩、俺のボトル軽いんですけど?」
「水資源の節約にご協力下さい」
「さっきのまだ根に持ってたのかよ、激ダサだぜ。…俺の分飲むか?」
あ、くそこの良い先輩め!駄目だと制する前に長太郎は言った。
「あ、大丈夫です。いつもより軽いだけで中身は問題ないあたりに愛を感じるんで」
「乾ー、やっぱりさっきの謎の液体欲しいんだけどボトル1本分」
駄目だこの後輩、甘やかすとつけあがる…なんて思っていたら勝ち誇ったような笑みで呼んでもないのに跡部が現れた。
「フ…甘ぇな鳳。俺のドリンクはいつもと変わらないぜ?」
「いや跡部はなんか後が怖いから防衛本能が働いただけ」
「照れんなよ」
「こんなタイミングで照れるシャイガールなんか聞いたことないんだけど。そして現れてから当たり前のように抱き上げるな!!」
「あぁ、青学除けにな」
いや青学の方がまともだったよ。でも青学のベンチで不二と英二が「仲良しだね」「跡部良いなー」みたいな会話が聞こえたけど仲良しか?これ仲良しなのか?
ぶらーんと子猫宜しく抱き上げられる友情なんかあってたまるか…と思いながらも、無抵抗にされるがままでいた。
「まぁ、名前はツンデレやからなぁ」
「べ…別にっ、忍足なんか眼鏡が爆発してその破片が眼球に刺さっても何とも思わないんだからね!」
「なぁ…、最近本気で疑問なんやけど俺は何をそんな恨まれるようなことした?」
「スカート長いとか俺ニーハイのが好きとか膝の形が良いとか訴えたら勝てそうなセクハラ発言」
「それ跡部には黙っといてくれへん?…って続けて俺は言ってたと思うねんけど」
「忍足テメェ…わかってんだろうな?」
「ほれ見ぃ、俺の命の炎が風前にさらされるどころか台風直撃されとるやん」
「あ、ジローまた寝てる」
何やら私から手を離した跡部から肌に悪い冷気を感じ取ったので、ぽかぽかとした日差しで眠る王子のもとに向かう。
(あ、忍足のドリンク…作ってないや)
そんなことを、脳裏によぎらせながら。