01

女子中学生(3年)の平均身長は156cm…らしい。


「10cmも差があるな」


「絶対伸びてやる」


そんなことが書かれた雑誌を片手に、跡部は私を膝に乗せたまま頭を撫でる。ちなみに、男子中学生(3年)の平均身長は165cmだが、彼の身長は175cmもある。


「お前はもう無理だろ。つか伸びんな、このサイズが良い」


「知るか。跡部は縮め、そして私が頭から踏み潰す」


拗ねたように顔を背ければ、くつくつと笑う声。むかつく。


「俺は可愛くて良いと思うぜ?145cm」


私は彼の膝から下りて、左手の中指を立てる。


「うっさい馬鹿」


そもそも、私は146cmだ。










Fruits×Candy
















別に、長身モデル体型になりたいとかそんな壮絶な野望を抱いてるわけではなくて。
ナイスバディも美脚も要らないから(いや、胸はちょっと欲しいけど)せめて平均的な身長が欲しかった。

おかげさまで中学生も最後の年だというのに、未だに小学生扱いはザラで。周りの友人を見上げるたび、ちょっと傷つくものがある。


「女だし、そんな気にすることでもねぇだろ」


「名前は小さいままがかわEーよ」


C組にて。隣の席であるジローの抱き枕になるのにも慣れてしまった。主な原因…というか敗因は、言っても聞かない我らが氷帝学園の王様と、亮の飼い犬だ。


「150は欲しい」


「あと5cmか、微妙だな」


「あと4cmね。…毎日牛乳飲んでよく寝てるんだけどな」


愛でられるのが嫌いなわけではない。よく同級生からお菓子が貰えることや、何だかんだで甘やかされているから、比較的得をしているという認識もある。…が、しかし。


「見下したい〜、私だって後輩を愛でたい〜」


「前半おかしいだろ。…つか、名前はもう成長期終わっただろ?いや、お前に成長期があったかはビミョーだ…いっだ!」


「亮なんか嫌いだ」


げしっ。軽く蹴ったつもりだが、弁慶に当たってしまったらしい。少しだけ反省。


「短い足伸ばしやがって…!」


反省したことを反省しよう。自分の背景に炎が揺れた。


「ジロー、離せ。亮は今言ってはいけないことを言った」


「A〜、宍戸なんかどーでもEけど名前を離すのはヤだCー」


じたばたと暴れてみても、ジローの腕の中からは出られない。


「それより俺もう眠いC…」


「私を抱き枕にしたまま寝るな」


ぺしぺし。反応ナシ。私の子供体温が大層お気に入りらしい彼は、結構人の人権を無視する。


「ったく激ダサだぜ」


「あー、私も眠くなってきた」


「待てよ、お前まで寝たらノート写せねーだろ」


「他力本願が前提とかよくない。てか次の時間自習とか言ってなかった?」


人肌は安心出来る。しかも、現在は昼食後で次の時間は現代文。穏やかな日差しは告げる…次は睡眠学習だよ、と。
緩んだジローの腕から抜けて、自分の椅子に座る。これだけすぐに寝れるのもちょっと羨ましい体質だ。


「おやすみ、亮」


「おやすみ、じゃねーよ。…ったく」


そうは言いながらも、机に伏せた私の頭に無骨な手が柔らかく乗った。


そうされるのは、嫌いじゃない。








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テーマ「人外ファンタジー」
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