春学園編・4




「不二クンらのクラスの劇に名前が出るらしいで」


「それってアリなんスか?」


可愛い女の子が勧めて来たたこ焼きを口にしながら、白石は言う。やっぱり自分らで作った方が美味いなんて思いつつも、更に一口。


「俺らんトコも呼んだら来るやろか?」


「いや、難しいんとちゃいます?流石に大阪までってのは」


交通費どないすんねん。やっぱり駄目やろか。…そんな会話を続ける彼らには熱い女子達からの視線。それらを軽くスルーして、ふらふらと宛も無く歩く。


「あ、もう来てたんだね」


そんな時、何人かの女子生徒に囲まれていた名前が白石の存在に気づいてやって来た。


「おぉ、久しぶりやな名前」


「あ、たこ焼き。1つ頂戴」


「俺が作った方が美味いで?」


「はいはい」


軽くあしらってたこ焼きを食べる名前の姿に、財前は言う。


「………名前先輩、アンタその格好」


「うん、劇の衣装。似合ってる?」


不安げに小首を傾げる姿は可愛いが、ある種の嫌味だ。何故なら、それほどまでに、


「似合い過ぎやろ」


ていうかなんで部長はなんとも思わへんのや。そう尋ねれば、もう見慣れとると返された。


彼女の着ているのはシンプルながらも格好良い、貴族のような服。髪は上手いこと隠してあるらしく、一見ただの色男にしか見えない。腰から下がる玩具であろう剣すらそれっぽく見えるのだ。


「1時からだから絶対来てね?」


「そりゃ勿論やけど、名前はこれからどないするん?」


その問いに、悪戯な笑みが言った。


「ナンパかな」


あぁ、これは大漁やろうな。財前はそう思った。















ナンパ…というよりは宣伝なのだが、ぶっちゃけ自分から声をかけなくても女の子の方から話しかけて来る。それ自体は苦痛ではないが、本職の前に疲れてしまっては話にならない。


「いやー、でもびっくりッスよ!名前先輩も出るなんて」


「しかも…、似合い過ぎでしょアンタ」


「それは良かった。でもこれ、ちょっと動き難いんだよね」


偶然見つけた桃にファンタを奢ってもらっていたら、リョーマも発見したので人気の少ない場所にて3人でちょっと休憩中。


「海堂のヤツは先輩が来るの知ってたんッスよね?あ〜っ!なんかムカつく!」


「いや何で。練習の時に偶然会っただけだって」


本当は海堂も見つけたのだが、抜けられないらしい。…ので、あっさり放置した。


「知ってたらその時間空けたのに」


拗ねたような声に苦笑する。


「明日もあるから」


「明日も来んの?」


「そりゃせっかくだし、ちゃんとどっちにも参加するよ」


ふーん、と興味なさげな返事にツレナいなぁと零せば彼はすくっと立ち上がってしまった。


「席、空けといて」


「その権限は私には無いな」


来る気自体はあるようなので、私から手塚にでも頼めば何とかなるだろうか。








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