取り外し不可につき
可能なことなら四六時中、24時間。ずっとずっと傍に居たい。片時も離れないで、君に溺れていたい。
「首ったけだな」
と、いつだか参謀が言っとったが…それはちょっと違う。
「首どころか、全身浸かっとるぜよ」
首ったけとは『首丈』からきてて、首の高さまで深くはまり込むという意らしい。が、頭の天辺から足の先まで全部。彼女に…名前に振り回されてしまう。
「ピリーン」
「わっ!」
正面からいきなり飛びつけば、びっくりしたらしい名前が声をあげる。
「もー、驚かすの良くない」
綺麗な指が俺の頬をつまむけれど、声音は少し呆れたぐらいで…相変わらず俺に甘い。
「離れてた分の充電じゃ」
「トイレに行った数分でバッテリー切れだなんて燃費最悪だね」
「でも安上がりナリ」
「…言ってくれるね」
頬をつねる指先に力が入って少し痛い。
「嘘。安くなんかないぜよ」
ぎゅう。腕に力を込めて、その身の柔らかさを堪能。同じ人間なのにこんなにも触り心地が違うなんてと毎回実感している。
肩口に顔を寄せれば、頭を撫でられる。なんて至福。
「いつまでも充電は完了しないからのぅ」
いつも思うのだが、彼女と離れている間の自分はこの世界で一番頑張っていると思う。名前と離れている時間は呼吸の意味すら分からないのだから。
本当に病気だと思う。それと同時に、それほどまでに名前を愛しているのを誇っても良い。
「本当に燃費悪いなぁ。これだとお昼が食べられないんだけど?」
「まーくんはこうしてたらお腹空かないから問題ないぜよ」
「ごめんね、私の空腹は幸福では満たされないんだ」
「………別のもので満たすという手段も、」
「それ以上先は内容次第でぶん殴るけど大丈夫?」
「…ピヨッ」
釣れんのぅ、と言ってから彼女を背中から抱きしめ直す。
「よく思うんだけどさ、」
「?」
パンをちぎって口にしてから、言われた。
「雅治は不便だよね。私に引っ付いてないと駄目なんだから」
「そう思うなら一瞬たりとも俺から離れなさんな」
「それは不可能だと思う」
「…と言うと思ってちゃんと我慢してるなんて、まーくんは出来た彼氏じゃな」
「自分で言わなかったら完璧だったね」
くすくすと笑う、無邪気な表情。初めてこの表情を見た時、俺は完全に陥落した。
「けど、現実的に可能な範囲でなら…」
顎をすくって、柔らかい頬に唇を寄せた。
「いつまでも傍に居んしゃい」
その笑顔をいつまでも、一番傍で見ていたいから。