青春学園編・2
「急なことで済まなかったな」
「んー、大丈夫。それにお昼奢って貰えたし」
青学では文化祭前日は丸々1日調整期間として授業の無い日が与えられるらしく、私も公欠を貰って此方へと来ている。余談だが雅治とブン太・赤也には散々駄々をこねられた。
で・現在。あちこちは準備やら何やらで忙しいので、当日しか使わないらしい生徒会室に避難しながら手塚とお昼なんぞを食べている。…周助達は一息ついたら来るとのことだ。
「不二達のクラスの演劇は期待されているからな」
「うん。結構大変」
奢って貰えたパンを飲み込んで、苦笑。周りの人達はみんな良い人なのだが、演技のクオリティが高い。故に、自然と自分のハードルも上がるわけで。
「俺も楽しみにしている」
「うわ、ハードル上げられた」
そんなやり取りをしていた時。
「部長、ちょっと当日の控え室の使用許可…って、え?!」
「よ、海堂」
あきらかに私の存在に驚いたらしい彼に軽やかに手を挙げる。
「名字先輩?!…なんで此処に、」
「立海に嫌気がさして逃げて来た」
「本人達に叱られるぞ」
「2人が黙ってれば問題ナシ…まぁ、ちょっと助っ人に呼ばれただけ」
その応えに、そういえばと。
「菊丸先輩が強力な援軍が来るとか言ってたような…」
「軍じゃないけどねー。それより、手塚に用があったんじゃないの?」
「あ、部長。この…」
何やら許可を貰いたかったらしい。しかし部長と生徒会長の両立とは大変だろうななんて考えていたら、周助と英二もやって来た。
「海堂も来てたんだね」
「名前ー、ごめんよ1人にしてーっ」
「此処に確かに存在する手塚と海堂は無視か」
「俺も一緒にお昼食べたかったにゃ」
「英二はまだやることがあるでしょ。僕もだけど。
にしても暇してないかと思って来たけど、問題なかったみたいだね」
そういえば、周助達に取り敢えず生徒会室にと案内された時は誰もいなかった。流石に手塚には話が行っていたらしく、いきなり声をかけても海堂のようなリアクションは得られなかったが。
「んー、でも私はやること無いし手伝おうか?」
「ううん、もう少しで終わるから大丈夫。通しをやる時にまた呼びに来るよ」
そう言って、じゃあ戻ろうかと部屋を出る2人は忙しいのだろう。わざわざ気を遣わせてしまった。
「あ、海堂なら大丈夫だと思うけど桃達に名前のこと言いふらすなよーっ!」
「此処だけの秘密、だからね」
「ウス」
先輩の指示に生真面目に従う様子を見て、ふと思った。
(…立海ではバレてるんだけどね)
そういえば、彼らは来るのだろうかと彼女はケータイを開いた。