四天宝寺編・肆
「嫌やー!ワイはまだ離れとうない!」
「金ちゃん、名前が決めたことや。引き止めたらあかん」
「せーやーけーどーっ!」
「…俺達に、止める権利はなかとよ」
「う゛ーっ」
「金太郎、名前だって本当は辛いんやで?黙って見送るんが男の役目や」
「………ねぇ、毎回毎回打ち合わせしたみたいな安いコント止めない?無駄にシリアスだけど、私は家に帰るだけだから」
蔵、千歳、ユウジにデコピンをしながら溜め息をつく。
「まぁ、しゃあないッスわ」
「光もすっかり馴染んだなー」
うんうんと頷く謙也を無視して、私は相変わらず金ちゃんに引っ付かれている。
「なぁ次はいつ来るん?」
「え、ごめん分からない」
今回だって、急なことだったし。そんなに頻繁に来れる場所でもない。
「安心しぃ金ちゃん、名前が来ぉへんのやったら俺らが行けば良いだけの話や」
蔵が金ちゃんの頭を撫でながら事も無くそう言った。
「え、来るの?」
嫌ではないが初耳だ。練習試合か何かだろうか。
「まぁ、神奈川やなくて行くんは東京なんやけどな」
「何しに?」
「あれ、名前先輩知らんのですか?」
「へ?」
「なんや不二クンあたりから連絡いっとると思ったんやけどなぁ」
そう言った彼はケータイを取り出して、周助かららしいメールを見せてくれた。
「青学、再来週文化祭なんやって」
「私、連絡もらってない…」
精神に20のダメージだ。え、私青学のみんなとそれなりに仲良いと思ってたのにちょっとショック。
「名前先輩は連絡入れんでも分かると思ったんやないですか?」
「せやで。むしろ俺らにしか連絡してへんのとちゃう?」
「かなぁ…?」
これで雅治達にはメール来てたら凹む…が、青学と四天は仲が良いが、そう言えば立海のみんなは青学と仲が良いのか疑問に思った。
(あ、でも蓮二と乾とか真田も手塚とメールするらしいしなぁ)
「ま、そんなわけやから再来週は俺らは東京に居るで」
そう言って笑った蔵に、多分自分も行くであろう旨を告げて、私は四天宝寺を後にした。
この先に起こる面倒事なんか、予想もしないで。