もし君と出会ったら
「ねぇ、良かったら一緒に遊ばない?」
胡散臭い笑顔のまま私の手を引く男に大外刈りをかけたい。
しかし場所は都内某所。人が多いここで大外刈りなんて迷惑になるだろうか。というか、過剰防衛で捕まったら困る。
(よし、腕を捻ろう)
そう決めて決行しかけた時、視界を遮るオレンジ。
「ごめん、待った?早く行こうか」
男と私の間に入り、するりと私の手を取って背中を押された。男は「彼氏持ちか」みたいなことを舌打ちしながら去っていったが私に彼氏は居ない。彼氏より面倒な弟的存在は数名存在するが。
なんて考えながらオレンジの彼に大人しくついて行き、そろそろ離せよと思ったところで彼は立ち止まってこちらを向いた。
「いきなりゴメンね。困ってるみたいだったから、」
急に台詞が止まるのが気になったが、素直に頭を下げる。
「あぁ、お気になさらず。助けて頂きありが…」
その途中ていきなり彼は私の両手を握った。
「君、名前は?俺は山吹中3年の千石清純!良かったら俺とお茶でも…」
「……………助けたのが演技なら、大外刈りをかけるけど?」
「違うよ!ただ、まさかこんなに可愛い子だとは思わなかったから…」
「取り敢えず手を離そう」
「名前を教えてくれるなら」
「立海大の名字名前ですサヨウナラ」
ばっと手を離して背中を向ける。正直このタイプの人種は苦手だ。
「立海大かぁ。俺はテニス部なんだけど、名前ちゃん興味無い?」
テニス部、と言う単語に振り返った私、本当に馬鹿。
「ラッキー」
それは良い笑顔のまま、また腕を取られた。