続・季節外れな気はするが
「は?リゾート施設無料招待券?」
オサムちゃんからその券を貰った時、俺は思った。
(名前の水着姿…っ!)
毒手がガッツポーズになったのは、仕方のないことだった。
だって俺かて思春期やもん。
「ついに来たなこの日が!」
「せやでぇ!あ、抜け駆けは厳禁やからな!」
「2人共、テンション上がり過ぎたい」
「ワイ早くプール入りたい〜っ!」
謙也と手を交わしながら、現地集合のため施設の入り口付近に俺らは居る。
名前達はバスで来るとかで、あと2分で来ると千歳は言っていた。
水着姿はさぞ可愛いんだろうとクリスマス顔負けでワクワクしていたら、名前に光、小春とユウジがやって来た。銀や小石川は用事とかで今回は欠席だ。
「姉ちゃん遅い〜っ!」
「ごめんごめん、お待たせ」
ぴょんと金ちゃんが名前に抱き付く。羨ましいこと山の如しだが今年初の名前の私服(冬ver.)があまりにも可愛いので許す。というか、俺もだがこの如何にも冬!っと言った私服から水着になるわけか。
………。
(あかん、保てよ俺の理性…っ!)
流石に冬の格好で中に入ると暑い。上着だけ脱いでロッカーへと向かう。こういう時、小春ちゃんが実は男なのが残念だ。1人で行くって何か寂しい。
適当に空いた場所に荷物を入れて、水着を取り出して着替え始めた。
男の着替えは早い。バッと脱いでバッと着る。むしろ女の着替えが遅い理由が分からないのだが、今はそんな待ち時間さえ全く問題の無い人物が若干名。
「てか、どんな水着買ったんすか?」
「それ以前に小春はともかくユウジが選んだっちゅーのが気に入らんねんけど」
「俺が選びたかったわー。めっちゃきわどいヤツ」
「残念。そんなにきわどいのなんか着れません」
そんな品の無い会話を遮るように、名前が現れた。
最近はご無沙汰だったポニーテールと、惜しげもなく晒されるナマ足。上は露出度は低いが、禁欲的なようであるが故に際立つ鎖骨と背中のラインがたまらない。
(…)
チラッと謙也に目配らせ。鋭い目つきは一見男前にしか見えない…のだが。
(C…か?)
(いやDやろ。やっぱり着痩せするタイプやったんやな)
(…んんー絶頂ーっ!)
なんて彼らの残念な脳内など知るわけもなく、彼女はウォータースライダーに乗りたいと急かす。
「ね、小春ちゃんアレ乗ろうよ!」
「何言うてんねん!小春とスライダー乗るんは俺の特権や!」
「その権利は無償で名前ちゃんに譲りたいとこやけど、私ちょっと見たいとこあるんよ」
「せやったら名前、俺と…「ほな、行こうか」…って白石!」
「残念やったな謙也!名前行くで」
「あ、うん。…って、危ないからプールサイド走んな!」
そんな端から見たら恋人同士のようなやり取りを見て、小春とユウジは呟いた。
「流石は蔵リンやわぁ」
「攫いおったな」
「謙也先輩、スライダー乗ります?」
「…野郎と乗っても楽しくないわ」
「俺かてお断りや。部長が行ってもうたから遠山の面倒見るん手伝って下さい」
ひょい。財前が指差す方を見る。
「千歳ーっ!まだまだ行くでぇ!」
「金ちゃん、俺のライフは残りすくなか!謙也に頼むったい!」
「…スライダー、2桁目突入らしいッスわ」
「名前ちゃん、蔵リンやのうて金ちゃんと行くべきやったんやない…?」
取り敢えずぐったりしている千歳に、合掌。…まぁ後々自分達も犠牲になるであろうが。