僕の最強最終手段
「うわ」
「ご挨拶だね名前」
折角の休日。
久しぶりに剣道部に1日居てやろうかなんて考えていたのに。
「なんで会っちゃうかなぁ」
「名前が剣道部に浮気なんかするのが悪いんだろ」
いや、私は剣道>テニスなんだけどな。
部活として優先するのはテニス>剣道だけどな。
「折角だから付き合いなよ」
「拒否権を発動します」
「ふーん?」
「さ、精市どこに行く?」
なんで彼はこんなに怖いのだろうか。いや喧嘩なら負ける気はしないけれど。
−−−なんて思ったせいかどうかは知らないが。
「へぇ、最近の中学生は良いご身分だなぁ?」
ベタな不良×3に遭遇しました。
「可愛い子連れてんな。彼女か?」
「つーか女みてぇな顔だなお前。彼女の方が男前じゃねぇ?」
「あはは、目がビー玉な連中の言葉に耳を貸すほど俺も馬鹿じゃないんでね。鬱陶しいから消えてくれない?」
(おぉ…、笑顔が黒い)
安っぽい挑発に真っ黒な笑顔を返せば、不良の1人は顔を歪めて精市の胸ぐらを掴み…かけたその手に、竹刀が叩き付けられる。
「ッ!!」
素手に竹刀を叩き付けられたのだ。痛くないハズがない。
「流石だね、名前」
「貴方様に怪我1つさせては申し訳が立ちませんからね」
演技過剰に答えれば、彼が薄く笑うのが分かる。
「…我らが部長様に手を出した罪は重いですよ?」
久しぶりにスイッチが入った。
「なるほど。真田と張り合えるワケだ」
「まぁ、私は彼ほどテニスは出来ないけどね」
不良×3は口ほどもなく完封。
苦しげに打撲痕を押さえている。
「あ、そうそう1つ訂正させてよ」
愉しげに声をかける精市は魔王だと思う。
「さっきコイツが俺より男前とか彼女とか言ってたけどさ…、」
竹刀を仕舞いながら耳を傾けていると、いきなり腕を引かれた。
「俺専用にして最強のSPだから、気をつけた方が良いよ?」
そう、彼は満足げに笑った。