スポーツマンの笑みは素敵
「きゃーっ!」
「仁王君カッコイー!」
仁王の決めたレイアップに黄色い歓声があちこちからあがる。
普段なら学校行事に熱意の無い彼も、今回は名前のこともあって本気らしい。
前半戦が終了し、得点は22−16だ。
「流石に楽勝ってのは難しいか」
「向こうは4人が現役じゃからな」
6点差、スリーポイントなら2本で追いつかれてしまう。
「大丈夫だよ、頑張って」
パタパタと団扇で風を送っている名前からタオルを貰って汗を拭う。まるで部活の休憩中みたいなシチュエーションだ。
「名前が応援してくれるからのぅ。負けたりはせんよ」
「弁当の分は働かねーとな」
にっ、とブン太の爽やかな笑みを直視した…いや直視してしまった数名の女子が倒れたことなど知るよしもなく、名前は笑みを返す。
「……………先輩ら、羨ましい」
「拗ねんなよ赤也」
そのやり取りを見ていた赤也は、ジャッカルを睨んだ。
「先輩、あとでジュース1本」
「今回は奢ってやるよ」
拗ねた後輩に同情したのか、珍しく素直にそう答えた。
トンッ、と拍子抜けするような音を立てたかと思えばネットに当たって向こうのコートへと落ちるボール。
「ふむ。やはり丸井のようにはいかないか」
周りの歓声を受けながらも自らの打球を分析する彼を見たら、きっと名前は苦笑するだろう。
「綱渡り…、ですか。無断で使用すると彼に怒られますよ?」
蓮二のしようとしたことが分かっている柳生は、相手が綱渡りを修得していないことに少しだけ安心する。
現在24−24…どちらも引かない状態。しかも1セット目だ。
「負けるわけにはいかなくてな」
「まったく、何を約束したんですか?」
眼鏡の位置を直しながら溜め息をついた柳生に、蓮二は言う。
「秘密だ」
周りとは違って、涼しい表情のまま彼は悪戯っぽく笑った。