潔癖症
あぁ、ほらまた拒絶反応。
触らないで近寄らないでよ他人は嫌い。私以外の汚い存在が全部いやだから。
(また、やっちゃった)
街で喧嘩を売られることはよくある。そしてそれらを返り討ちにすることも。
倒れてる人達なんかどうだって良い。そんなことより、殴られた頬が気持ち悪い。掴まれた服も脱ぎ捨てたい。潔癖症なのだ。他人に触られたくない触りたくない。血の臭いがするこの裏道も、反吐が出るぐらい堪えられない。蹴るのはまぁ良いが、殴ってしまった。私の肌が他人に触れる。あぁ、早く帰ってシャワーを浴びよう。
「…あれ、サボり?」
帰路。時刻はまだ昼なのに、珍しい人間が街に居た。
「今日は元から昼までだ。…また喧嘩か」
「うん、だから早く帰りたい」
手塚国光とは特に何の縁もない。無かった。過去形な話。
私が喧嘩してるのを見られて、ちょっと話すようになったのがきっかけだった気がする。
「怪我は…」
「大したことないよ」
へらり。笑って誤魔化しても彼は心配性なのか過保護か知らないが、私の怪我には結構目敏い。
「嘘をつくな。また放っておく気か?」
ぱしっ。腕を取られて、向かう先は青学にリターン。あ、私は今日学校に行ってないからリターンではないか。またいつもみたいにシャワーを借りて彼に治療して貰うコース。最近の恒例パターン。
「普通ならさ、」
「なんだ?」
此処から学校まではそう遠くない。そんな場所で喧嘩する私も私だが。
「他人に触られたら、絶対引き剥がすんだけどさ」
汚いのは自分以外全部嫌い。他人は嫌い。潔癖症って誰かが言ってた。公共機関も嫌い。人混みも嫌い。
「なんか手塚は平気なんだよね」
「…そうか」
ああ、もしかしたら。
私は彼に治療して欲しくて怪我をするのかもしれないと、考えて否定出来なかったり。
もしかしたら、潔癖症じゃないのかも。