侵入禁止
「あのさ、わざわざ方向違うのに一緒に帰らなくてよくない?」
「「「よくない」」」
返答は精市、雅治、ブン太からである。
綺麗にハモりやがって打ち合わせでもしてたのかと問いたい。
「俺はこっちだからじゃあな名前!」
「紳士なら最後まで送りたいところですが、彼らがいるなら大丈夫でしょう。私もここで失礼します」
「気をつけて帰れ」
桑原と柳生、真田は空気を読んでかつ実際に家が私より近いからだろう。途中で別の道へと歩いて行った。
「別に1人だって問題ないのに…」
「こんな時間に1人で帰るなんて親御さんだって心配するじゃろ」
あ。と思った。
そうか知らないのかと。
「………いや、私1人暮らしだから」
「へぇ〜1人暮らしッスか…1人暮らし?!」
「赤也五月蝿い」
ギュッと鼻を摘めば、痛い痛いと抵抗される。
直ぐに離してはやったが。
「女の1人暮らし…って危なくないか?」
「しかも中学生で…、よく親が許したな」
ブン太と蓮二の言うことに溜め息混じりで答える。
「何の為に鍛えてると思ってるの?それにセキュリティーはそれなりのトコだよ。ちなみに保護者は放任主義」
素っ気ない声音に何かを察したらしい彼らはそれ以上踏み込んで来る気はないらしい。
「ならいつでも遊びに来れるのう」
「は?」
楽しそうに言った雅治に、精市が悪ノリする。
「そうだね。今度暇な時に行くから用意しておいて」
「いや、フツーに却下」
「えぇー良いだろぃ別に。お菓子持って行ってやるから」
「ミ●ドのエンゼルフレンチ…じゃなくて!」
「あ、俺も行ってみたいッス!」
「興味はあるな」
次々とふざけた声があがる。というか蓮二まで興味を持つな。
(多分、気を遣ってくれたんだろうけど)
実施されそうなのが、唯一にして最大の欠点だが。
名前を家に送った後。
幸村と柳は途中で別れ、仁王とブン太は一緒に帰っていた。
「なー、名前ってさ」
「言いなさんなブンちゃん。俺らに踏み込む権利はないぜよ」
あまりにも半端な時期だったせいか、転入当初は一部で囁かれていた。誰が言ったのか知らないが、下世話な話だ。
−−−家庭環境が複雑なのだと。
自己紹介の際に転校は過去5回経験してると言うから転勤家族なのかとその噂はすぐに消えたが。
例えば、それこそ剣道に打ち込んでどうしても立海に来たかったから…というなら分かる。
しかし特に理由も無く、いくら強いとは言え中学生の女子が1人暮らし。
それに…、
「まぁ、色々あるんじゃろ」
「でもお前、名前の家には行くつもりだろ?」
さっきは話を変える為に悪ノリしたが多分コイツは本気だ。
「さーて、どうかのう?」
「抜け駆けは禁止だからな」
「プリッ」
まぁ、抜け駆けなんて出来ないということを後に彼らは理解するのだけれども。