交換条件
球技大会中は時間の都合上昼休みがない。それぞれが時間を見つけて昼食を取るのである。
なので、今屋上にいるのは名前と仁王、ブン太のB組'sと先ほど試合が終わった柳生と赤也だ。
「後は決勝だけじゃのぅ」
「ま、俺の天才的シュートで完勝だな」
「…ジャッカル先輩に負けた」
「でも赤也も頑張ってたよ」
「名前さんのチームは優勝でしたね、おめでとうございます」
球技大会の順位決定戦は女子の方が早く決まる。
現在は男子のバレーが準決勝で、89%柳のクラスが勝つだろう(本人談)
ソフトは今決勝で、A組対C組…つまり真田対幸村のクラスだが延長戦になるだろうからと、昼食後に見に行く予定だ。そしてジャッカル率いるサッカーは優勝したのだが、サッカー部から勧誘やらヒーローインタビューやらで見捨ててきた(byブン太)らしい。
「ていうか、なんで赤也は名前に膝枕してもらってんだよぃ」
「2位だったくせにズルいナリ」
「え、順位関係あるんスか?!」
「だって赤也と私はもう試合無いから、あとはゆっくり雅治達の観戦するんだー」
ぐでー、としていたら柳生に叱られた。流石に今日はもう疲れたのだから、少しぐらい許して欲しい。
「ていうかお弁当作ってあげたじゃん」
「結局全員分じゃねーか!ご褒美じゃない」
「ジャッカルの分も消費したくせに何言ってんの」
「俺は自分の分しか食べてないぜよ」
「柳生先輩の玉子焼きパクッたじゃないスか」
「えぇ、しかも自分の分があるにも関わらず」
柳生はお茶を飲みながら平然としているが、仁王はそろそろと彼から離れた。
「ちっ、名前慰めて」
「舌打ちしながら慰めを要求するって凄くない?」
「真田のホームランが無かったら…」
延長は9回までなのだが9回裏にして、真田のサヨナラホームランが決まって試合終了。1点差でC組は負けてしまったのだ。
「重いです」
「気のせいだよ」
団体競技だから仕方ないとは言え、彼は少し不機嫌そうだ。名前を後ろから抱きしめて体重をかける。
「次は仁王達?負けたら練習量2倍にしてやろ」
「なんでA組に対抗意識燃やしてんの」
「真田のクラスに総合優勝は与えない」
「まぁ、私的にもB組の総合優勝を狙ってるから…」
残りの試合は男子バスケとバレーの決勝だ。
「蓮二、頑張って!」
「負けたら…、ふふ」
総合優勝の為には、これ以上A組に優勝されては困る。
「おや、私は応援してくださらないのですか?」
「柳生は今は敵だし」
「それは残念です」
べーっと舌を出せば、やれやれと言った感じで返された。
「しかし…、俺のクラスは勝っても負けても総合優勝は望めないからな」
「えー!何か1つぐらい優勝しようよ!」
「女子のバスケが既に優勝している」
「蓮二お願い!」
此処で蓮二に勝って貰わなくては、B組が総合優勝出来ない。
「俺に特にメリットは無いからな」
「お弁当作ってあげたじゃん」
「全員分、な。それだと俺がつまらん」
「れんれんのばーか」
「………子供かお前は。
そうだな、1つ言うことを聞いてくれたらA組優勝を阻止してやろう」
彼がそう言うからには、絶対阻止出来る自信があるのだろう。
「聞く!可能な範囲なら」
「聞いたあとのキャンセルは受け付けないぞ?」
「…可能な範囲で善処します」
念を押されて、先ほどより小さな声でそう返せば、すっと耳元で囁かれた。
「 」
「え?」
言われた内容を飲み込んで、拍子抜け。問い返そうとすれば、彼は片手を挙げて去ってしまった。
「…名前、何言われたの?」
「あーいや、」
多分、精市に言ったら面倒そうだ。取り敢えず聞こえなかったと彼には返すが。
−−−デート1回、だ。
(まさか蓮二に催促されるとは)
そんなことを考えながら、雅治達の応援に向かった。