特異体質君限定
最近、私はとある特異体質であるということに気がついた。
「………」
さて、この状況をどうしようかと思っていたら、ポケットのケータイが震えた。
取り出して見れば“宍戸亮”と予想通りの名前。
「もしもーし」
『名前、どこにいる?』
「中庭のベンチ」
『今から回収しに行く』
「頼んだー」
ケータイを切ってポケットにしまい、私は溜め息をつく。
「起きてー、宍戸が来るよー」
「…ん、」
「起きておくれよー」
私をその腕の中に閉じ込めながら、気持ち良さげに眠るのは氷帝の眠り王子・芥川慈郎だ。
きっかけは、保健室でサボって寝ていたら、気が付いた時には今みたいに彼の腕の中にいた。以来、彼は私がどこへ居てもフラッとやって来ては人を抱き枕にして眠る。
忍足曰わく“慈郎ホイホイ”
そんな某イニシャルGを連想させるあだ名なんかこれっぽっちも嬉しくないのが、学校に居る間はかなりホイホイしているので仕方ないかもしれない。
宍戸なんかは、探す前に私に電話することを覚えた。さっきみたいなやり取りは結構頻繁に行われる。
「ジロー?」
「眠E…」
暖かい体温に此方まで眠くなりそうだ。
「もー」
別に、嫌ではないのだけど。
「起きてくれないと、放っておいちゃうよ?」
「駄目だCー」
ひょいとジローの手を退けようとしたら、ぎゅ、と引き寄せられて縮まる距離。
「…起きてんじゃん」
「名前は抱き心地がEーから離したくないC」
「いやいや離しておくれよ」
なんてやり取りをしていたら。
「………ジロー、練習を差し置いて良い度胸だな?」
「あ、宍戸」
「毎回毎回お疲れさま。ジロー、早く練習に行きなさい」
走って来たらしく、宍戸の額からは汗が流れる。ちなみに表情は不機嫌。これは仕方ない。
「Aー、名前も一緒がEー」
「意味が分からないのだけど」
「あぁ、それ良いな」
起き上がったは良いが私を離す気が無いらしいジローの言葉に、宍戸はぽんと手を叩いた。
「名前、これから放課後になったら部室に来てくれよ」
「………は?」
「そしたら、わざわざ回収に来る必要もねーし」
「それは君が楽したいだけじゃないかな?」
まぁ、忍足や向日なんかも回収しに来ることはあるが。
確かに私は自他共に認める慈郎ホイホイだが、テニス部に必要以上に関わりたくない身としてはその案は却下したい。
「それEー!休憩に名前を抱きしめられる!」
「…その提案を却下します」
「跡部の奴に言ってみっか」
「宍戸、止めようって。か弱い乙女をいじめるのは」
「俺達だってコイツの回収は疲れんだよ」
いやいや切実な目を向けられても。嫌なものは嫌だよ、ただでさえ女子連中に睨まれてるのに。
「名前、」
ちょん、と小首を傾げたジローが此方を見上げた。
「ダメ?」
「………」
声音といい、上目遣いといい…。
「ちょっと考えさせて」
本っ当に可愛い!!