くはない



「真田と雅治とブン太は大丈夫。で、蓮二と柳生と桑原と赤也と…雪村」


「喧嘩売ってんの?」


「なんで分かったのかが疑問なんだけど幸村って珍しい名字だよね」


「というか呼び方がバラバラだのう」


「柳生と柳って字面的に被るじゃん。あと桑原と切原も。だから呼びやすい方優先した」


「なんで俺は名字呼びなワケ?」


「心の距rいたひいたひ!」


放課後。

あの後1回で覚えろと自己紹介を頂き、今はその確認。


「名前、名前で呼んでやりんしゃい。拗ねたら面倒ぜよ」


抓られた頬をよしよしとさすられた。


「精市より幸村のが呼びやす…わかったから拗ねないでおくれ精市」


黒いオーラが見えて仕方ないなぁと訂正した。


「大まかな説明は以上かな。まぁ頭は悪くないらしいから大丈夫だと思うけど」


「精市は私の何を知っている…?」


はぁーと溜め息を吐きながらも、剣道と体育の時以外は縛らない髪を結う。


「まぁ、やると言ったからには手は抜かないけど」


性格だから仕方ない。















「ほい」


「ありがとうございます」


「さんきゅー名前!」


彼女はマメな人間だった。
散々嫌々言っていたのが嘘のように、此方のして欲しいことを指示する前に済ませている。


「わざわざすいません」


今だって、冷えたタオルを言う前に渡してくれた。


「いや、仕事だし?」


「それにしても気が利き過ぎですよ。助かります」


そう言えば褒められた理由が分からないかのように小首を傾げられる。


「フツーじゃないかな?そんなこと言うの柳生ぐらいだよ」


「彼らも言わないだけで同じように思ってますよ」


「ふーん」


興味無さそうに使用したタオルを受け取ると、彼女はふわりと笑った。


「柳生は紳士だね。ありがと」


「………」


若干見とれているとヒョイとブン太が現れた。


「やっぱ可愛いよなー名前」


「…いつから居たんですか?」


「ついさっき。居なくても困んねーと思ってたけど、やっぱ居た方が良いな。

や、名前だからかもしんねーけど」


「そうかもしれませんね」


部活の雰囲気がいつもより柔らかい。
だからといって緩いわけでもなく、良い感じだ。















「久しぶりだなー、遅く帰るの」


「確かに…、お前は剣道の方も遅くまでは残らないな」


「まぁね」


部員は帰り支度中。
副部長である真田は鍵を返す役目があるから最後まで帰れないらしい。


「いきなりで済まなかった」


「んー、結構楽しかったから別に良いよ」


真田は自他共に厳しいから女子に苦手とされる傾向にあるが、試合をした仲からというか、名前とは普通に友情を築いている。


「それに、他の女の子が真田に叱られるのを想像したらやっぱり私がやるべきかもしれないと思えてきた」


女であろうと彼は容赦なく叱るだろう。例え真田ファンでも…精神的ダメージは大きそうだ。


「お前なら叱る必要も無いだろう」


「君に叱られるの怖そうで嫌」


これは心底本音だ。


「名前先輩って副部長と仲良いんスか?」


そんな時、支度を終えたらしい赤也が現れた。


「一番付き合い長いのは真田だね…って言っても、私が立海に来たのは去年の冬だけどさ」


「随分ビミョーな時期に来たんスね」


「まーね…って、あ。やっと出て来た」


私が待っていた…正確には待たされていた理由は1つで部長命令だからだ。そうでなければとっくに帰っている。


「…で・なんで私が待たされてたの?」


そう尋ねれば至極当たり前のように精市は言った。


「一緒に帰る為に決まってるだろ」


「女性がこんな時間に1人で帰るのは危ないですからね」



いや、君達よりは強い自信あるんだけどと言う言葉は呑み込んだ。

真田には負けるかもしれないから。









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