知らせがあります


見た瞬間、見たことを後悔。

助けるのは面倒臭い。それはもう激しく面倒臭い。けれど、見捨てた時のことを考えてみる。我が校の顔と言ってもおかしくない彼を見捨てたなんて噂が立てば、私のそれなり充実ライフはぶち壊し確定パターン。主に女子に。しかも、彼とは同じクラス。…ちっ。舌打ちして駆ける。


(つーかなんで絡まれてんの?)


確かに、手塚国光という男は外見から優等生だから絡みやすいのかもしれないが。年齢詐称なその男にフツー目を付け…あ、テニス関係者なら付けるか。

そんな安っぽい不良(あれ高校生じゃん)と何やら言い合って、そのうちの1人が拳を振り上げる…前に。


「秘技・スカートも厭わない上段回し蹴り!」


ばこっ。
私のローファーの踵は少しだけ高さがあるのだが、クリーンヒット。


「名字?!」


「君はどこに行ってもモテるねぇ」


おぉ、手塚国光の焦った表情。これは珍しい。手元にカメラが無いのが残念だが、撮影する余裕も無い。
不良BとCがAの敵討ち。私に向かう拳を避けて。うん、彼らには残念なお知らせだが喧嘩なら負けないという話だ。

というワケで。


「有り金全部置いてくなら、許してあげるかも」


まったく、どちらが悪者だか。










けちょん。なんて可愛らしい表現ではないが(ドゴッとかバキッとか濁点だらけの音ばっかりが正解)不良'sは退散。有り金は貰えなかったが生徒会長の前でそんな暴挙に出るのは自重。


「大丈…」


夫だよね?と訊くつもりだったのだが。


「何をしている!」


「へっ?」


ガバッと左手を取られ、脳内混乱。何をしていると問われても…、


「不良撃退…?」


しかも、君の為に。


「危ないだろう!いくら武道を嗜んでいるからと女子が1人で…っ!」


え、何これ何これ。私の、確実に目の前の彼よりは出来の悪い頭はついていけてないよ?私、何か悪いことした?むしろ、助けたよね?ちょっとしたヒーローのハズなんだけど。


「聞いているのか!」


「え、あぁハイ」


ごめんなさい、全然聞いてない。


「怪我は無いか?」


ハァ、と溜め息をついたと思ったら。いやいや私のが溜め息つきたいよ?ついでにその台詞言う権利あるの私だし、しかも今更だし、あといつまで手を握ってるのかな?これクラスの女子とかに見つかったら不良より怖いよ女だもの。


「無傷…です」


ちょっと反撃をガードした時の左腕がジンジンするけどな。まぁそれは黙っておく。


「良かった…」


「!」


先ほどとは一転。心底安心したらしい表情に不本意ながらドキッとした。


「痕でも残ったら…、」


その言葉に、ふと、言ってみたい台詞が脳内に浮かぶ。しかし彼にこの冗談が通じるかどうか。


「その時は、手塚が責任取れば良いんじゃない?」


「………」


言ってみたら、彼は一瞬目を見開いて、おぉ今日は色んな表情を見てるなぁなんて悠長に考えてた自分………本当に馬鹿。



「責任という形でなく、素直にお前が欲しいんだが?」



………ん?

今、目の前の男は何と言っただろうか。


責任という形ではなく、うん。素直に、うん。お前が………つまり、私が。欲しい……………。


「え、は、えぇぇぇぇ…っ?!」


ちょっと周りに人が居ないからって近所迷惑な叫びをあげたことを心からお詫び申し上げます。


「ちょっと待とう。冷静になれよ、落ち着けってば!」


「…お前がな」


空いた方の手で口元を抑えながらあわあわ。ちょっと何でお前は冷静なんだよ悔しいなチクショー。なんて私の思考は全無視。おい、生徒会長が生徒の意見を無視なんて良い度胸…って、


「?!!」


ぐいっ、ぽす。
気がついたらあら不思議!手塚国光の腕の中…で、え、近い近い近い近い!!





「好きだ、名前」





耳元で囁かれた台詞に、私の思考がショートしたことを、ここにお知らせ致します。









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