意打ちだったり


ぎゅっと背中から抱き締められて。
最初は少し戸惑ったけど、すぐに君だと分かる。


「………」


「………」


交わす言葉は何も無くて。
互いの体温を確かめる…、わけもなく。


「樺地ー、ちょっとこの子頼む」


「ウス」


人の背中に抱き付き寝やがったジローを樺地に託す。


「もー、最後まで寝てるしー」


樺地におぶられた彼の頬をむにーっと摘む。意外と柔らかくて気持ち良い。


「ジローだから仕方ねぇな」


「まぁね」


合宿最終日、というか帰宅日。
四天宝寺と立海は氷帝や青学より先に帰ることになっている。
荷物をバスに積み終わって、発車まではもうちょっとだけ時間があるから少しフラフラしていた。


「あー、帰ったら真っ先に寝よう。どっかの俺様のせいで疲れた」


「よく言うぜ。毎朝真田や日吉と稽古してたくせに」


「手塚は苦労をかけたなって労ってくれたのにー。東京に転校するなら氷帝じゃなくて青学だな」


拗ねたように言えば、鼻で笑われた。


「1人暮らしってことは転校する気なんかねーんだろ?

お前の墓場は立海のくせによく言うぜ」


「………墓場、か。言い得て妙」


「嫌なら氷帝に来るか?」


「だからそれなら青学だって。でも、そうだね」


くすくす笑いながら、応える。


「遊びになら行くかもね」


それでも、王様は満足したらしい。


「あんまり来ねーと、俺らから行くからな」















「嫌やー!ワイが面倒見るから!」


「金ちゃん、名前は連れて行けんとよ。四天じゃ暮らせんばい」


「せーやーけーどーっ!」


「そうやで、ちゃんと立海に帰しなさい」


「う゛ーっ」


「金太郎、名前が本当に好きなら立海に帰すんが優しさやで?」


「お前ら本当いい加減にしろ」


千歳、ユウジ、蔵の順にデコピンをすれば3人は額を押さえながら涙目。


「私は野生動物かっての!」


「まぁ、確かに飼いたいか飼いたくないかって言ったら前し「光、止めとき」…そっすね」


キッと睨む名前に財前と謙也は黙った。


「嫌やー、ワイは名前に懐いとんねん」


「自己申告することかいな」


ぎゅうぎゅうと離れる気の無い彼は可愛らしいが、このままだと本当に大阪まで連れて行かれそうである。


「もー、会えないからって死ぬわけじゃないんだから」


なんとか剥がそうとしても、本気で剥がれない。
どうしたものかと蔵に視線を送れば、溜め息をつきながら彼は金太郎の頭を撫でる。…毒手じゃない手で。


「金ちゃん、そないな我が儘ばっかり言っとったら名前に嫌われるで?」


「それは嫌や!」


「せやろ?だったら今は大人しゅう離れんと、名前は大阪に遊びに来てくれへんで?」


「ちょっと誰も大阪に行くな「ホンマか?!大阪に来てくれるん?」………」


きらきらきらきら。
汚れを知らない無垢な瞳が輝いて、否定することを憚る。

ウィンクした蔵にちょっとデコピンを喰らわせたいが、仕方ない。


「………良い子にしてたらね」


「っしゃー!ワイ、良い子にしとる!良い子で待っとるさかい早よ来てな!」


「早くは無理やろ」


苦笑しながらも、彼は此方にだけ分かるよう意地悪な笑みを浮かべる。
ハァと溜め息をつきながら、ようやく離れた金ちゃんの頭を撫でた。


「蔵リーン、名残惜しいけどそろそろよー」


ぐったりとした海堂と桃城に同情の眼差しを向けてから、バスに乗り込む彼らを見送る。


「名前、」


「?」


バスに乗り込む寸前、と言っても既にステップに足をかけているから彼は私より高い位置でちょいちょいと手招いた。


特に何の疑問も無く近寄れば、グイッと引かれて…額に柔らかい感触。


「またな」


「〜〜〜っ!」


それが額にキスされたのだと理解した時には、蔵は爽やかな笑顔でバスに乗り込んでいて。



後ろから感じる黒い気配にすら気付けないほど、顔が熱かった。







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