指名入ります



「…と、言うワケで誰かオススメの子いない?」


合同合宿の際にサポート役が必要ということでマネージャーを雇おうということは決定になった。が、最重要なのは誰を雇うかだ。


「ファンでなくソツなく仕事をこなせる、が最低条件か?」


「それと、それなりの体力と精神力も必要だな」


ジャッカルの提示に柳がそう付け加える。


「そうなると中々難しいですね」


柳生が唸るのも仕方ない。そもそも男子テニス部のファンでないという条件だけで大半は切り捨てである。


「1人だけ心当たりがおるの」


そんな中、手を挙げたのは仁王だった。


「誰ッスか?」


「あ、まさか」


正反対の反応を見せる赤也とブン太をさておき、じゃがと彼は言った。


「引き受けるかは分からん」


「あ、そこは大丈夫。良い子だったら“引き受けてくれる”から」


「「「………」」」


要するに幸村が気に入ったら是が非でも引き受けさせる気らしい。
真っ黒な雰囲気に部室の気温が下がる錯覚を気にすることなく、真田は口を開いた。


「で、それは誰なんだ?」


仁王の口元が、笑みを浮かべた。


「同じクラスの…、」















翌日。


「名前ー!お昼食べに行こー!」


友人は毎回わざわざB組まで弁当を持って呼びに来る。
それが可愛らしくて微笑しながら彼女の元に向かった…のだが。


「君が名字名前さん?」


見覚えのない爽やかな笑みに肩を掴まれた。


「はい?」


誰だコイツ、なんて思っていたら友人の顔が輝いている。
あ、もしかして男子テニス部の…えーと誰だっけ。


「ちょっと用事があるんだけど、良いかな?」


「え、私これからお昼…」


何か嫌な予感がすると思って断る気だったのだが。


「ごめんね、ちょっと彼女を借りるけど良いよね」


彼がそう尋ねれば、嬉しさに声にならないのか何度も頷く我が親友。

その様子に満足したのか腕を引っ張られて強制的に連れて行かれる。


「や、え、ちょっと待った!ていうか私を売るな友人!しかも行くとは言ってない!」


「減るモンじゃないし良いだろ?じゃ屋上に行くよ」


「私の時間が減る…っ!」


珍しく取り乱し気味の名前を見て、友人は呟いた。


「羨ましい…」



あの幸村君からご指名だなんて。















「あ、真田久しぶり〜」


「ああ、久しぶりだな名字」


久しぶりに会う真田に軽やかに挨拶した理由の大部分は現実逃避である。

現在屋上にて男子テニス部と思われる8人(レギュラーかな?)とご対面。
本能的に逃げようとしたら取り敢えず話だけでもと雅治とブン太に捕まった。


(今朝から何か変だった原因はコレか)


内容次第ではシメると胸に誓い初対面5人を含む彼らとランチタイム…となるハズもなくて。


「意味を分かりたい」


「うん、意味を分かろうとする向上心は必要だよね」


じゃなくて。


「私のランチタイムを奪った理由は?」


「奪ったなんて人聞きが悪いな。ちゃんと同意の上だったろ?」


「………もう良いや、用件だけ述べておくれ」


なんか頭痛がしてきた。
あとで保健室で薬を貰いに行こうなんて思った矢先。


「マネージャーをやって欲しいんだ」



よし、雅治とブン太をシメようか。







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