勇者とkiss(T)





「はぁ…」


誰も居ない部屋に1人、私はソファに座っていた。


「………」


鳴らないと分かっているケータイを眺め、やはり溜め息をつく。



私の恋人は仕事の忙しい人間だ。

そんなの付き合う前から知っていたし、こんな日も来ると知っていた。


でも。


(私の誕生日、なのに…)


自分が生を受けた日ぐらいワガママを言いたい。

プレゼントもケーキも要らない。


けど…、


「仕事と私どっちが大事なのよー」


乾いた声で言った所で、虚しさが増すばかりで。

そんな安っぽい言葉で彼を困らせたくはない。


「………」


ずっと待っていても、彼は来ない。


今日は帰れないと連絡があった。先に寝ていろとも。


「別にいーもん…」


1人なのを良いことに、私は喋りだす。


「拗ねてなんかないですよーっ、だ」



勿論、嘘だ。

本当は寂しいし切ないし腹が立つし泣きたい。


「先になんて寝るもんか」



時刻はもうすぐ0時。
−−−−−誕生日が、終わってしまう。



「………」



視界がぼやけるのは、眠いからだ。
決して涙ではない。





ガチャガチャッ





「!」


狙ったようなタイミングで、鍵を開ける音がする。


(嘘、だって…)


涙を拭って玄関に向かう。


「ウォーリア…?」


今日は帰れないと言ったのに。


「ただいま、ミラベル」


「〜っ!!」


少し疲れた表情の彼に、思い切り抱きつく。


「誕生日おめでとう」


「………うん」


ウォーリアの首筋に顔を埋めれば、子供をあやすように私の頭を撫でる。


「悪いな、プレゼントは用意出来なかった。…必ず渡すから、」


その言葉を遮るように首を振る。


「プレゼントは要らない。でも…、」








あなたからキスして






応えるように彼は口付け、ミラベルをきつく抱き締めた。



時刻は………11時59分。





ハッピーバースディ、ミラベル。










……………

title:確かに恋だった


「お題探してたら良い感じの10題があったからDFFでやってみたキス企画」です。
キス、と言うことで3と6は欠席ですが。

新参メンズもやります…多分。










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テーマ「人外ファンタジー」
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