防虫効果(レノ)
「今すぐ視界から消えて下さい」
「先輩に対する態度じゃないんだぞ、と」
久しぶりの休日で新しい洋服買おうとか、美味しいモノを食べようとか、可愛い雑貨屋が出来たみたいだから行こうとか。
珍しく女の子的思考前回で家を出たら、赤い髪のオフの時に最も会いたくない…いやオフじゃなくても会いたくない男に遭遇した。
「先輩サボりですか?ツォンさんにチクりますよ」
「そんなワケないんだぞ、と。俺も今日は休みだぞ、と」
「それは良かったですね。私は忙しいのでこれで失礼しますサヨナラ」
片手を振って逃げようとすると、その腕を掴まれた。
「どーせ暇だろ?」
「そんな一方的な決めつけ良くないです…って、歩き出さないで下さい!」
掴んだ手を引っ張って、彼は有無を言わさず歩き出す。
「……………何処に行くんですか?」
こうなったら何を言っても無駄だと、経験上知っている。
「デートだぞ、と」
当たり前のように答える先輩に、呆れたように返す。
「それ、何処に行くかの答えじゃありません」
サヨナラ私の休日。
内心そう呟いて、私はやはり溜め息をつく。
「ちょっとした疑問なんですけど、」
先輩の買ってくれたクレープを一口食べてから尋ねる。
「なんで毎回毎回毎回毎回私と休日被ってるんです?」
先輩は自分の分のクレープを店員から受け取って言う。
「わざわざ俺が合わせてやってるからだぞ、と」
「いや、そうする必要性がわからないんですって」
先輩は女性にモテるから、わざわざ自分から誘わずともデートなんて出来るだろう。
一時は女避けの為かと思ったが、どうもそうではないらしい。
「必要性ならあるぞ、と」
私はクレープをもう一口食べながら先輩の言葉を待った。
「ミラベルにヘンな虫が付かないようにする為だぞ、と」
急に耳元に顔を寄せ、吐息をかけられる。
「!!」
慌てて離れると彼はニヤリと笑う。
「顔赤いぞ、と」
「誰のせいですか!」
そして、それ以来先輩に今まで以上にからかわれる羽目になるのは…また別の話。
「結構本気なんだぞ、と」
「ハッキリ言わないと伝わらないだろうけどな」
この状況を楽しんでいる相棒に、ルードは言った。
「しかし、ミラベルと休みを合わせるのに俺を犠牲にするのは止めてくれ」
「無理な相談だぞ、と」
予想通りの答えに、彼は深い溜め息をついた。